![]() | おやすみ魔獣少女 暗黒女神の《領域》 (角川スニーカー文庫) 川人 忠明 紺野 賢護 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-07-01 by G-Tools |
辺境の村に住む少女エストは二人組の男女に連れさられ、領域魔術師になれと迫られる。領域魔術師は己の命と引き替えに、自身を“魔獣”化する絶対的な存在だった――。三人の少年少女の絆が熱い、戦乱ファンタジー!!
魔獣召喚の夜
大陸最強の殺戮者「領域魔術師」となり戦場に送り込まれた少女の生きるための戦いの物語。
戦うヒロインはいいですよね。生き残るために必死なればこそ、その生き様が輝いて見える。
戦争のための兵器<領域魔術師>として戦場に赴き、過酷な現実に怯えるだけだったエストが、目の前で殺されていく兵士を死なせないために、勇気を振り絞り立ち上がる姿に燃えた。
呼び出した魔獣を通して亡き姉の優しさと温かさを知ったエストの喜びがなんとも切なかったなぁ。
明るく勇敢で家族思いなエストのキャラは好感触で、折れても強くなって立ち上がる精神力は素晴らしい。他人を生かすために自分の身を投げ打つ健気なところもまたいじらしいな。
戦闘メイドのニビさんもいいキャラだった。戦えば間違いなく命を落とすであろう相手にも顔色一つ変えずに挑んでいく姿が格好良すぎる。一家に一人は欲しいですね。クールな顔で毒舌吐いてくれー。
ただし、軍の指揮官であるスハイツの無能っぷりは如何ともしがたいな。
素人をロクな訓練もさせずにいきなりの実戦投入は無茶だろう。それに作戦をヒミツにして何かいいことあるの? 意思伝達を怠っていたせいで、エストと連携がまったく取れてないじゃない。
そもそもエストを村から連れ出した時も、どうして後々にまで禍根を残すような強引な方法をとったのかな。あの状況なら、恩を着せて自分から来るように誘導することもできたような気がする。
不確定要素だらけのバクチを戦術といっちゃいけない。恋人を殺された復讐に燃えるのは構わないが、だったらもっとマシな復讐計画を練りなさいよと思った。
シリアスなダークファンタジーですが、キャラのコミカルな掛け合いで相殺していますね。
ただし、それがいいことなのか、悪いことなのか、こればかりは読む人の好みだからわからない。
緊張感がなくなって、折角のギリギリに張り詰めた雰囲気がぶち壊しになったりするので、作品の持ち味をこれと決めたら一貫するべきだと思うんですけどね。コメディなら、また別の話でやらないか?