スノウピー1 スノウピー、見つめる (富士見ファンタジア文庫) 山田有 富士見書房 2010-03-20 by G-Tools |
とびきり可愛くて、勇敢で、クールな女の子、スノウピー。彼女を異世界から連れ帰ってしまった“僕”は、部屋を提供したうえ、同級生になった。知的好奇心旺盛なスノウピーがまっさらな目で見つめる世界は、新鮮なことばかり。だけど、小説家志望の可香谷さんはなぜかおかんむりで…。女の子って、難しい!
この世界に舞い降りた雪
一人ぼっちの銀世界からやってきた少女スノウピーが体験する人間観察型ボーイミーツガール。
スノウピーがいるだけで、平凡な日常がちょっとした不思議に彩られていくのが素敵でした。
本人はいたって真面目なのに他人からは皮肉屋に取られてしまう主人公と人間が大好きなのにすぐに相手を怒らせてしまうスノウピー。どこかズレた二人の浮世離れした会話が面白い。
二人の異文化交流を通して「人間ってなんだろう?」と改めて自分たちの奇妙さに気付かされる。
クールで無表情なスノウピーですが、ふとしたことで垣間見せる感情の変化にドキっとさせられます。
感じたことを素直に言ってしまう故に教室で孤立してしまうスノウピーに構いがちな主人公にヤキモチを焼いてついツンツンしてしまう可香谷さんがいじらしくて可愛かったなぁ。
自分の気持ちに気づいてもらうために遠回しに自分たちをモデルにした小説を読ませるんですが、そうまでしても気づいてもらえず、さらに想いを持て余して空回りする姿に思わず声援を送りたくなった。
名前を明かさず、いつも種族の名前である「スノウピー」で呼ばれるスノウピーだけれども、そういえば主人公にも名前が出てなかったような。読み返しても「あなた」としか呼ばれてないよね。
憧れの人間社会に触れて次第に感情を見せていくスノウピーが無垢の純白としたら、主人公は人間味を廃した無色透明でした。彼が鈍感なのも他人の気持ちに疎いのも後々の伏線だったのかなぁ。
似た者同士だから引き合ったのか、二人の相似点を探していくとなかなかに興味深いですね。
無感動に見えるスノウピーですが、飛び込んだ学校生活の中で確かに傷ついて、それでもまだ興味を捨てないでいてくれて、スガモさんの愚かに見える行動にも善意を見出そうとしてくれたのはとても嬉しかった。この世界で生きていくには、まだまだ理解不明なことばかりでしょうけれど、いつか「人間も愚か者ばかりではない」とわかってくれて、ずっと人間を好きでいて欲しいですね。
さて、これで『第21回ファンタジア大賞』と『第1回ネクストファンタジア大賞』の受賞作は一通り読みましたが。この『スノウピー』はキャラとストーリーが高いところでバランスが取れていて一番面白かった。
あとは、どれもどんぐりの背比べな気がする。『夏海紗音の不思議な世界』はヒロイン造形だけはいいけどストーリーがいまひとつ物足りないし。『ヘヴンズ・ダイアリー』はヒロインに魅力を感じない。『神さまのいない日曜日』はキャラ設定と構成力は高いが説明力が抜けているのと盛り上げが足らない。言わずもがなですが、『中の下!』はすべてにおいて下の下の下。
こんなに地雷率が高くていいのかとも思うが、これがファンタジア大賞クオリティだから仕方ないか。