![]() | 神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫) 入江君人 富士見書房 2010-01-20 by G-Tools |
アイは墓守だ。今日もせっせと47個の墓を掘っている。村へ帰れば優しい村人に囲まれて楽しい一日が暮れていく。だけどその日は何かが違った。銀色の髪、紅玉の瞳。凄まじい美貌の、人食い玩具と名乗る少年―。その日、アイは、運命に出会った。

ゲームクリアに失敗した『バイオハザード』のその後の未来みたいな世界観だ。
文章やストーリー構成は悪くないんですけど、イマイチ面白味がわからないし、読んでいてワクワクしてくるものがない。やはり個人的にこういった不条理系の話は肌に合わなくて苦手です。
曖昧な部分がいつまでも説明されないまま放置されて話が進んでいくっていうのが、もよもよする。
最初は、逃亡兵の隠れ里か何かとも思ったけれど、村の謎はP18で気づきました。
海燕さんのネトラジで作者インタヴュー聞いてましたけど、裏設定がやたらと濃いなぁ。
アンナとヨーキの死の状況は推理しようと思えばできるけれど、あえて描写を省いた理由がわからない。
全体的にかなり切り詰めているけれど、もう少し余裕を持ってもよかった。
アイがハンプニーを父親だと思った理由もただの「直感」だけでは弱い気もするし、養い親たちを虐殺した彼と一緒に旅をするというのも共感が難しいな。死者を悪だと決めつけるハンプニーも独善的すぎるきらいがある。キャラクターの掘り下げが浅いんじゃない?
墓穴一つ掘るのに長い時間をかけて、遺体を運ぶのも一苦労だったアイが、後半になってシャベル一振りで人間二人を吹っ飛ばすほどの怪力無双っぷりをみせるのが不思議でならない。墓守パワー?
神様の存在をほのめかしておきながら、突然その前提をひっくり返されても困る。
宙ぶらりんなオカルトを持ち出されるよりも、未知のウイルス説の方がシンプルで納得がいく。
墓守はそのウイルスへの抗体を持つ代わりに情緒を欠落させた人間。ハンプニーは元の体質が特殊だったために脳のリミッターが外れ細胞の無限増殖が止まらなくなった人間だった。
アイと自分との繋がりを知って脳に流れた幸福物質により脳が正常に戻ったために、最後にはハンプニーも他の者と同様に死ぬことができたのではないかと。そういう解釈もできません?
ハナは何故ハンプニーの側から居なくなったのかとか、女一人で子供を育てて村を作ろうと思ったのか、その辺りも「壊れた墓守だったから」の一言でスルーなんだよなぁ……。
2巻も執筆中だそうですが、この結末からさらに続けるのはそれこそ蛇足のように思う。
あるとすれば墓守としてスカーに師事を受けながら、ハナ&ハンプニーかアンナ&ヨーキの生きていた頃の足跡を追う感じかなぁ。どちらにせよ、そこまで食指が動かないのでこの先は切ることにする。
ときにこの叙述トリックというか、村の謎だけれど、「小説だからこそできる手法」という推薦状もあるように、小説でしかできないことをやっているのは確かに凄いんだけど、今のラノベってメディアミックスで売れる作品を作らなきゃ駄目じゃね? 恋愛要素もないし話も暗いし、大人向きで中高生にウケるかどうかも疑問だなぁ。
『神さまのいない日曜日』ラジオ。
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