 | A=宇宙少女2×魂の速度 (電撃文庫) 日野 一二三 アスキーメディアワークス 2010-01-10 by G-Tools |
遠矢孝文は空を飛んだ。月にタッチして戻ってくる。―と、カッコつけてみたものの、要は、幽体離脱体質の孝文が、月の美少女、転校生美少女、そしてオカルト美少女に気に入られたりしながら、自分のトラウマも含めて青春しちゃうラブコメ。なのかこれ?―。
SFがやりたいのか、オカルトがやりたいのか、ボーイミーツガールをやりたいのか、方向性が迷路。
まあ全部まとめてやりたかったのだろうけど、欲張ったせいですべてにおいて中途半端になっている。
キャラクターはうまく描けているが、ストーリーの主軸がブレまくっているせいか、話の流れがあっちこっちに行ってどうにも落ち着いて読めない。最後も投げっぱなしで終わっているのも味気ない。
孝文とのコミュニケーションが成り立ってない瞑は、地上スタッフとして致命的じゃないか？
いや、二人の噛み合わない会話はコントとしては面白いんだが、本気で宇宙観測をするんであれば、常識的な意思疎通もできないような相手に地上からのサポートなんか任せらないだろ。
孝文は瞑のことを羨ましいと言った理由について、「お前には俺にない夢があるからだ」と、ちゃんと誤解を正すべきでしょう。そのことで喧嘩していたのに、なんで結局有耶無耶になっちゃってるのか。
不運な事故で水泳選手としての将来を失った孝文だけれど、別に下半身不随だとか、次に泳いだら死ぬだとか、そこまで深刻な症状でもないでしょう。
それなのにさも悲劇の主人公のように投げやりになって周囲に心配をかけて、甘ったれるな！
お前は、夢を奪われたんじゃない、自分から投げ出したんでしょ。身体を壊してそれでも辛いリハビリを乗り越えて戻ってきたスポーツ選手なんざ何人もいるよ！
やたらと水泳にこだわるくせに熱意が感じられないのがなんか嫌でした。もっと熱くなれよ！
う～ん、孝文の本命なのに翼のキャラが薄かった。それよりも瞑か奈美でしょうここは。
眼鏡を外した奈美のヒロイン度は9000オーバー、スカウター持った宇宙人もびっくりですよ。
地上最強のスーパーメイドさんは、まあ大金持ちのお嬢様ならそれくらいはいるよねでスルー。
孝文がやっとスタート地点に立ったところで物語終了とか、マジでどうしたいのよ、この作品は……。
