ダフロン

2009年10月07日

あずけて! 時間銀行 ご利用は計画的に/いとうのぶゆき

4044735034あずけて! 時間銀行 ご利用は計画的に (角川スニーカー文庫 205-5)
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-10-01

by G-Tools

時間を集めて運用し、貸し出しもする「時間銀行」。ある理由で、時間銀行に多大な負債を抱えてしまい、口座に残り約1年分しか時間がない往時洋斗は、黒づくめの少女とともに時間を稼ぐバイトを始める!

 時間で買えない価値がある

 時間を預けたり引き出したりできる"時間銀行"の営業として時間集めに従事する少年少女の物語。

◆時は心の医者である。
 男性恐怖症になってしまった少女の幼い頃のお話。
 洋斗とシーヌのいう"営業"の目的がイマイチ説明足りてないなーと思いましたが、つまりは彼らが人の記憶を遡り、心の傷をケアしていくというテーマのストーリーなんだと納得してればよいのかと。
 銀行から時間を引き出すことで体感時間を引き延ばす。ブレインバーストですね、わかります。

◆愛は時の威力を破る。
 どこかぎこちない関係の老夫婦の戦時中のお話。
 洋斗は考えなしに時間を引き出すようでなんだか危なっかしい。
 クッタやオムカが面白すぎて、シーヌが地味に見えてしまう。ちょっとキャラが大人しすぎるな。

 過去の記憶を添削することで、その記憶を繰り返し思い出していた分の時間が得られるとのことだけれど、時間の余剰が生まれるのはそれからの時間であって、それまでの時間ではないと思う。

◆時は我らに生を与える。
 病気の妹・陽菜のために奔走する兄・洋斗のお話。
 洋斗が時間銀行に手を貸している詳しい事情がやっとわかりました。
 自分の命を犠牲にしてまで、妹を生かそうとするとは、なんというお兄ちゃんの鑑!
 こういうお互いを想い合っている兄妹愛っていいなぁ。

 しかし、家族に迷惑をかけさせまいと、寿命という運命を受け入れる妹というのも愛おしい存在ではあるんですが、やはり生きる努力もせずに諦めるのは間違っている。
 死を受け入れるにしても、それは生き続けるための可能性をすべて試してみてからだ。
 陽菜のために自分の命を差し出す洋斗にしても、あまりに自分の命を軽々しく扱いすぎてイラっときましたね。そんな捨て鉢な気持ちで与えられた命で妹が喜ぶとでも思っているのか!

 時間銀行のフィナンシアとなることで、すれ違っていた兄妹愛が修復されていくのはよかった。

◆過去を変えていこう。
 恋愛に対して拒絶反応を起こす少年のお話。
 過去の心の傷に酔っている智也に腹が立つ。恋愛を下らないと思ってるなら最初から怜子ちゃんと付き合うなよな。本心では恋愛に臆病で怖気づいてるだけだろ。格好つけるなよキモい。


 やはり時間銀行のシステムは理屈にあっていないような。「寿命=銀行の時間残高」というのなら過去の時間は生きるために消費されていないと、リコレクトでどこからともなく寿命が増えることになる。「記憶=時間」としているのがおかしくなってる原因で、本当ならば「記憶=誕生以後の引き出し額」が正しいんじゃないのか?
 あと、『時の精霊』たちの社会ではどういう法律になっているのかわからないが、本人の許可なくリコレクトを回収して自分たちのものにする行為って時間泥棒にならないの?

 各話ともイイ話なんだけれど、強引に理屈っぽくまとめようとしているのが仇になっているというカンジ。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 角川スニーカー文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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