鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫) アスキーメディアワークス 2009-08-10 by G-Tools |
天才数学者、霧生賽馬は魔術師である―その真否を問い質してほしいという依頼を受け。うぐいすと譲は霧生博士が待つ麒麟館へ。だが翌日、霧生は首なしの死体となっていた。限られた容疑者は全員が無実という奇妙な状況に陥り!?
命題:魔術は科学なりや?
試験で満点しかとったことがない成績トップの天才少女と万年最下位の少年がおくる科学ミステリィ。
読み手の好みよっては、理屈っぽいキャラと文章センスが長所にも短所にもなりそう。
うぐいすによる『魔術とは科学である』という前置きが、ちょっとばかり回りくどくて集中力を散らされましたが、天才数学者の住むという麒麟館へやってきてからは、変人揃いの登場人物や俗世と隔絶された館といったミステリ独特な雰囲気に惹き込まれました。
うぐいすや譲たちを招待した霧生が死体となって見つかり、さらに館の出入りを封じられたクローズドサークルとなった状況下で犯人探しが展開していくのですが、容疑者それぞれが常人とは異なる特殊な才能を持った「素質者」で、その能力で何故か全員の身の潔白が判明してしまい、ますます謎解きが混迷していくから目が離せない。
純粋な論理だけではなく常識外の発想や観察眼を求められる推理となっているのがポイントですね。
捜査の途中で名探偵然としたうぐいすが段々とデレてくるのが、もう辛抱たまらんですよ!
難しい知識を溜めこんで、いつも譲を煙に巻いて飄々としているけどやっぱり女の子なんだなぁ。
ミステリにおける名探偵とその助手は一心同体の存在。必然のカップリングであるわけですが、あれこれ頭が回るうぐいすと考えるより手足が動く直感タイプの譲の掛け合いは、まるで夫婦漫才のように息ぴったりでした。
解決編は、やや読者にアンフェアな真相に思われましたが、もう一段階予想の上をいく結末が待ち構えていて見事にドンデン返しを決めてくれました。さすが久住四季と言わざるを得ない。
本職のミステリ読みが読んだらどう思うのかはわかりませんが、前のシリーズよりは本格派のミステリっぽかった。このクオリティが続くのであるならば続編も読みたい。