![]() | 偽りのドラグーン (電撃文庫) アスキーメディアワークス 2009-08-10 by G-Tools |
最愛の兄を失い、国をうしなった王子ジャン。だが、ジャンの想いは空回りするばかり。「あなたを騎士学院に入学させます」美しき少女は無表情を崩さずそう言った。一握りのエリートにだけ許された竜騎士養成学院へ、ジャンを入学させるという。だが、それは亡き兄になりすますという偽装入学だった。
偽りの王子は、復讐に燃える
兄王子の名を騙り竜騎士を目指す少年と竜の皇女が繰り広げる陰謀渦巻く学園ファンタジー。
中ニ病の大家と評されている三上延さんにしては、かなりまともな異世界ファンタジーでしたね。
竜族の皇女ディアナの手引きにより、『神童』と呼ばれた兄王子と偽って騎士学院へ入学を果たしたものの、すぐに実力が伴なわずに落ちぶれていく様子が生々しい。
最初の威勢は早々にヘシ折られたものの、復讐の力を手に入れるために過酷な特訓を続けるその熱意だけは評価できますね。
落ちこぼれのジャンだけれども、クセのある変人ばかりが集まった「黒組」のクラスメイトたちのこだわりの無さに浮くことなく、むしろ面白がられていて、カナリ精神的に救われているよなぁ。
同室のクリスを敵国人だからって差別していたものの、あまりに「いい人」すぎるクリスに評価を改め、されどなかなか謝るきっかけを得られずに距離を置いてしまうところは、妙にジャンも意固地というか、不器用というか。
そしてそんなクリスの正体は実は・・・・・・。いやぁ、なかなか読者心理を心得ているではないですか。
誰もが落ちこぼれと侮っていたジャンが、本当は類まれなる実力を秘めていてといういかにもな展開でしたが、ディアナがジャンを自分のパートナーに選んだ理由には、これ以上ないほど納得してしまった。このパターンは新しいかもしれないな。
目標と目的が相容れない二人が、今後どんな関係を築いていくのかが興味深い。
しかし、不思議なのは、どうやって家出中のジャンの居場所を突き止められたのかという点。
学園の中にいる女生徒は全員竜族で、竜騎士は16歳以上の男しかなれず。また人間と竜族は恋愛禁止という制限についてもなんの理由付けもなかった気がするなぁ。
あれだけ毛嫌いしてたのにクリスがアダマスを信用してしまったのも引っかかった。
帝国から咽元に剣を突き付けられている状態なのに、内部で仲違いしていてこの学院は大丈夫なのかと不安で仕方がない。