ルゥとよゐこの悪党稼業 (HJ文庫) 藤谷ある ホビージャパン 2009-07-01 by G-Tools |
花井良児は頼まれごとは絶対断れないほどのお人好し。そんな良児がある日助けた少女は七大悪魔の一人「傲慢のルゥ」。勢いで下僕にされてしまって、悪事の片棒を担がされることになったけどルゥって、大して悪いことできないんじゃない?そんな不思議なちぐはぐ悪党稼業、ここに開業。
清い心にゃ、悪行身につかず
悪いことを強要する悪魔の女の子と契約してしまった善良な少年の物語。
悪党ぶっているけれど実は小心者な悪魔ルゥとお人好しで善人な良児の掛け合いが楽しかった。
悪行というのもおこがましい子供のイタズラ程度の悪事しかできないルゥですが、商品のラベルを裏向きにしたり、ゴミ箱を荒したり、やってることが微妙に陰険で実際にやられたら腹が立ちそうだ!
毎度ルゥの巻き添えあい尻拭いをするハメになる良児のフォローっぷりも見所でしたね。
いつも何か悪行を企んでいるようなルゥですが、徐々に本音が見えてくるとやるせないんだよなぁ。
悪魔として産まれたからには、この世を混沌に導くような悪行をしなければならず、しかし、それでも心はそんなに酷いことはできずにジレンマに陥り、ついには暴走を始め天使や神であっても如何ともし難いその状況の中で、良児が己の善なる心に従って人々や世界を救うために命を賭けて立ち向かう姿はとても潔くて堂々としていて印象的だったなぁ。
天使も悪魔もデジタルな存在とした世界観は、IT脳の私には分かりやすかったかな。
そこまで純正オカルト萌えではないので、むしろ昨今の時流として現代ファンタジーものはデジタルな要素も加味していた方が読者のウケもいいしね。
まあデータのくせにやたら人間臭い悪魔のルゥに対し、天使側のカナタは本当に機械っぽくて無表情キャラというにも個性が足りなかったな。
というか、ルゥを止めるためにきてるのに、結局はいつも余計なことしかしていなかった覚えが・・・・・・。
それにしてもキャラクターが少なく、辛うじて名前が与えられている脇役も役割はモブ同然なので、メインキャラだけ日常パートで浮き上がっているなぁ。
地味系の主人公なだけに、単体ではキャラが弱いので脇役も絡ませて欲しかったところ。
料理に例えると、ソースに旨みが足らず素材の深みが引き出せていないというカンジ。
これがデビュー作だから仕方がないのかもしれませんが、推敲の余地はまだある。