ダフロン

2009年06月28日

〈蒼橋〉義勇軍、出撃! 銀河乞食軍団 黎明篇 1/鷹見一幸

4150309590〈蒼橋〉義勇軍、出撃! (銀河乞食軍団 黎明篇1) (ハヤカワ文庫 JA タ 10-1 銀河乞食軍団 黎明編 1)
鷹見一幸
早川書房 2009-06-25

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東銀河系南東部の辺境に、小さいながらもそれなりの知名度を持つ自治星系〈蒼橋〉。豊富な鉱物資源に目をつけた〈紅天〉星系資本により開発されたこの星系で、その圧政に耐えかねた住民との間で抗争が勃発! 事態を重視した連邦政府は、ムックホッファ准将らが率いる2艦隊を派遣するが・・・・・・

 宇宙をかける炭鉱夫

 企業の圧政に反旗をひるがえし立ちあがった炭鉱夫と労働組合のスペース・オペラ。

 SFなのに下町言葉、べらんめえ口調で喋りたおす登場人物たちの活気溢れる賑わいが面白かった。
 利益重視の〈紅天〉星系企業の支配から独立するために〈蒼橋〉星系の炭鉱夫たちが義勇軍を結成して武装蜂起し戦艦と戦いを繰り広げるというお話なんですが、炭鉱夫といっても宇宙空間に浮かぶ岩石帯から鉱石を採掘してくる宇宙船乗りの炭鉱夫なんですね。
 もちろん、それだけでは戦力になりませんが、そこはハサミとなんとかは使いよう。いつもながらの鷹見節が冴えわたります。

 宇宙空間で岩石を運ぶ"車挽き"、スペースデブリを排除する"露払い"、岩石を破砕する"発破屋"、高性能レーダーで周囲を監視する"旗士"、建築から解体までこなす宇宙の大工職"宇宙鳶"など、昔ながらの『○○屋』という屋号を引き継いだ職人たちが、その磨き抜かれた技術と工夫、そして果てしない手間をもって、予想もつかないトラップで〈紅天〉の艦隊を翻弄していく様が見所です。

 群像劇であり、主人公と呼べるキャラクターが存在しないのが特徴といえば特徴でしょうかね。
 ついでにこれも鷹見作品の作風とも言えますが、命をかけた戦争をしているのにキャラクターたちにありがちなヒロイズムや"気負い"がなくて自然に力が抜けているのがよい。
 この手の戦記モノでやたら登場人物が意気込んだり、士気が高揚してたりすると、それだけで読んでてこっちまで疲れちゃうんですよね。
 まあ、この作品の場合、どのキャラも個性的でアクの濃い奴らばかりなので、逆に騒がし過ぎてちょっと余計な力が入ってしまいますがね。

 なんだか話の舞台に漂う雰囲気にすごい昭和臭がする。人々の生活感というか、彼らの根底にある信念や精神がとても熱いんですよね。襲いくる脅威に惑星の住民まるごと一致団結して立ち向かうあたりがかなり燃える。
 作中で触れている宇宙理論についても図入りで詳しく解説してくれているので、SF初心者にもわかりやすい。

 この作品より以前に『銀河乞食軍団』という作品があり、今回はそのリメイクだそうです。
 同系の新装版が出ているようだし、読んでみようかなぁ・・・・・・。

 
発動! タンポポ村救出作戦 (銀河乞食軍団 合本版1)発動! タンポポ村救出作戦 (銀河乞食軍団 合本版1)
鶴田 謙二

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posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ハヤカワ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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