ダフロン

2009年06月23日

その日彼は死なずにすむか?/小木君人

4094511423その日彼は死なずにすむか? (ガガガ文庫)
小木君人
小学館 2009-06-18

by G-Tools

僕は死んだ。何もいいことがない、17年の人生だった。でもマキエルと名乗るいきものが言うには、もういちど10歳からやり直し“奇跡の欠片”をあつめれば次は死なずにすむらしい。奇跡の欠片がなんなのかは教えてくれなかったけど、僕は生きよう、こんどは悔いを残さないために

 最高の人生を過ごすたったひとつの優しい方法

 17歳で死んでしまった少年が10歳の頃の自分に戻って人生をやり直す青春ジュブナイル。

 自分の初恋の頃を思い出してノスタルジックな気持ちにさせてくれる素敵なラブストーリーでした。
 一度死んで10歳に戻った主人公・鋼一が、そのまま10歳で通じる程に精神年齢が幼くて弱々しいのが引っ掛かりましたが、そういう意志薄弱な彼だからこそ、今度こそ悔いのないように生きようと勇気を出して新たに人間関係を築き上げていく姿に胸を打たれました。

 自分が助かるためには、"奇跡の欠片"という形のない、何なのかもわからないものを探す必要があるのだけれど、自分の事よりもかつての人生では救えなかった少女たちを今度こそ救うために動き始める彼の行動は、一見ヘタレだけれどもその裏に隠れた大きな強さと優しさを見せてくれる。

 海外からやってきて教室に馴染めずにいた美少女ソフィアと親しくなり、活発でプライドの高い彼女に振り回されつつもいままでより前向きに自分を捉えられるようになり、ソフィアの方も弱気だけれど心優しい鋼一に慈しみや愛おしさを抱くようになり、お互いに感化されながら成長していく二人がとっても微笑ましくて幸せな気分になれる。
 鋼一を連れ回すだけでなく、口下手な彼をちゃんと理解して気持ちを察してくれるいい娘なんだよなぁ。

 ソフィアだけなく、イジメを受けていた少女とも実、複雑な悩みを抱えた隣のお姉さん弥宵など、少女たちと交流を深めていくうちに鋼一の運命が変わっていき、彼のトラウマめいた人間不信の心が徐々に解けていく様子は、なんというか思わず「よくやった!お前は、頑張ったよ!本当によくやったよ!」と彼の背中をバシバシと叩いてやりたくなりましたね。
 本来、主体性が弱くて卑屈な主人公キャラって大嫌いなんですが、鋼一の場合は不思議とそこが可愛いく思えてきちゃうんですよねぇ。弱音を吐いても、いつも他人のために一生懸命で必死なのがよかった。

 もちろん、最後はハッピーエンドなんですけれど、そこに辿り着くまでが痛々しくて、どこか物悲しい。
 登場人物たちの小学生としての視点から心理描写を描くことで、それぞれの感情がより等身大に伝わってきて素晴らしかった。
 そしてキャラの中でも、マキエルは最高の友人の理想とも言うべき一番魅力的なキャラクターでした。私の少年時代にもマキエルが側にいてくれたら、どんなに楽しくてハッピーなものになっていただろうかと考えずにはいられませんね。

 いやぁ、これは良作ですぞ! 久しぶりに「俺はいま猛烈に感動している!」ってカンジになりました。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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