ダフロン

2009年05月26日

BLACK BLOOD BROTHERS 11 賢者転生/あざの耕平

4829134038BLACK BLOOD BROTHERS11 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生― (富士見ファンタジア文庫)
あざの 耕平
富士見書房 2009-05-20

by G-Tools

ついに最後の戦いの火蓋が切られた『九龍の血統』とジローたち。ジローに応え特区へと向かったミミコ、ケインやジャネットら各地の精鋭が特区に到着する中、ジローは九龍王との対決の時を迎える。鍛え直した銀刀を操り『九龍の血統』を圧倒するジローを前に、追いつめられたカーサたちは、最後の手段に打って出る…。

 そして伝説は、新たなる時代へ・・・・・・

 吸血鬼と人間の共存を目指した二人の兄弟と一人の少女の月下の伝説。ついに完結!

 読み終えたときのこの気持ちをどう表わせばよいのか。まさに感動の、そして激動の最終巻でした。
 ジローに導かれ、特区に乗り込んだミミコ。混血児となって舞い戻ったケイン、そしてサユカ、ジャネット、ケンスケ、パドリック。そして対する九龍王とカーサ始めとする『九龍の血統』たち。
 圧倒的劣勢でありながら、持てる戦力を駆使して立ち向かったジローやミミコ。そして最後まで生きることを諦めず、戦士として戦い抜いた『九龍の血統』の兄弟たちの散り様が見事でした。

 『カンパニー』と『九龍の血統』。お互いに退くことのできない理由を抱え、誰もが必死になってせめぎ合い、ぶつかり合い、つぶし合い、極限の戦いの中で、吸血鬼も人間も、その命の炎をひときわ燃え上がらせて散っていく。
 ジローの猛攻をカーサと兄弟たちの魔術がいなし、カーサが小細工を弄せばジローとケインの連携技でねじ伏せ、どちらかが奇策を放てば妙手で返す、予想もつかないファインプレーの応酬に目が離せませんでした。

 この戦いは避けられなかったのか。読んでいる間中、そう考えずにはいられなかった。
 『導主アダム』の血統は、何故生まれ、何故絶えねばならなかったのか。彼らは本当に悪だったのか。
 古い因習に縛られた吸血鬼社会の歪みの象徴、血族からくる格差社会が産み出した因果応報。
 彼らの誕生から行動には、常に恨みと憎しみの闘争が渦巻いている。しかし、彼らの存在が、行き止まりに陥っていた月下の世界に新しい風がもたらしたともいえる。
 彼らの起こした嵐、流された血もまた新時代を切り開くための必要な犠牲であった。

 ジロー、カーサ、ケイン、イヴ。家族のような絆で結ばれていた彼らが、どうしてお互いに刃を向け合い、このような結末を迎えねばならなかったのか。少しずつすれ違っていった過去のあの時、あの瞬間をやりなおせればという願いもむなしく、ついにはジローとカーサの戦いにも決着が訪れる。その時、二人の胸に飛来した思いはなんだったのか。
 そうして物語は最後の章へと進み、ジローとミミコの悲しい別れが訪れる。しかし、すべては長い歴史の1ページとなり、また次世代の吸血鬼と人間へと受け継がれ、遥かに遠い未来に希望を紡ぐ。

 いまの富士見ファンタジア文庫、それどころか、現状のどのライトノベルレーベルにおいても、ここまでのスケールと深みで物語を作れる作家はいないでしょうね。
 なにかもが素晴らしいシリーズでした。作者とこの作品に関わったすべての人に、ありがとう!

 次の新シリーズの構想はすでに練っているそうですが、今度はまったりしたカンジの話がいいなぁ。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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