イスノキオーバーロード (一迅社文庫) 貴島 吉志 一迅社 2009-05-20 by G-Tools |
双子の妹であるメイド・ユスハと共に、サングリア商王国の幼き姫・ヴェセルに仕えることとなった剣士・スティロス。わがままにも思える態度に振り回されながらも、王国に迫る不穏な影との戦いの中で、ヴェセルと心を通わせてゆく。そのような日々の中で、王国、そしてヴェセルに隠された「イスノキの儀」なる秘密が明かされてゆき…。
君と繋がる、心と身体
王国に隠された秘密を狙う侵略者から幼い姫を守る剣士とメイドの双子のお話。
ロリロリなお姫様ヴェセルと新たに護衛役となった剣士スティロスのカップリングが美味しかった。
思いがけない最初の出会いの悪さから、当初は二人していがみ合っていたものの、城への侵略者の侵入事件を通して、幼いながらも一国を背負うヴェセルの重圧とか、護衛役という職務に対するスティロスの覚悟の強さを知ってしまい、相手を見る目が変わって、お互い過剰なほど意識し始める様子が初々しくて可愛かった。
第4章からが本領発揮ですね。ヴェセルがスティロスに心を開いているのが仕草に現れはじめ、いままでとはまるで態度が軟化して無防備に振る舞うようになり、それがお年頃のスティロスくんの眠っていたロリコン心まで刺激してしまい、守るべき対象であるヴェセルに欲情してしまって、なんとか悟らせまいと内心で激しく懊悩を繰り広げている姿が萌えます。
ヴェセルもある程度は期待してやってるんだから、もう本当にご馳走様というカンジですw
もう一人重要なキャラとしては、メイド長のアザレアさんは十分に裏の主人公だったと思います。
元々はヴェセルの命を奪いにやってきた暗殺者でありながら、彼女と過す間に人間としての心を取り戻していき、最後には自分を犠牲にしてまでヴェセルのために命を投げ打つその献身と愛情に燃えました。
その愛はきっとヴェセルが与えたんでしょうね。居場所を与え、仕事を与え、共に城に住む家族を与え、そうして生きる喜び、人間の温かさが宿っていった。
そうやって人の優しさを思い出させてくれるのがヴェセルが城の人々から愛される理由なんだろうなぁ。
平和な貿易商国としても国土が小さすぎ、兵隊少なすぎ、最後も「イスノキの剣」というチート能力で強引に解決してたりと、設定は大ざっぱでしたが、登場人物はおおむね好印象でした。
いわゆるロスト・プラネットものですが、基本的には剣と魔法(っぽいもの)のファンタジーかなこれは。
口当たり甘く、ほんの少し苦く、身体の奥でじんわりと温まるホットココアのような一冊でした。