純愛を探せ! (GA文庫) 速水秋水 ソフトバンククリエイティブ 2009-05-15 by G-Tools |
大天使をも倒す力を有す魔神・カルマは魔王陛下の愛娘レイナ王女からの求愛をうけていた。魔界きっての美貌の持ち主だが、その性格には大きな難があった。そしてカルマは真実の愛を探すために魔界を家出した。そうして人間界で一人の少女と出会えたのだが、彼女と愛を育むには様々な障害が待ち受けていた。
純愛を探しに人間界へやってきた悪魔と人間の少女とのファンタジック・ラブストーリーです。
五億と三千万年も生きてきたくせに、男子中学生並のカルマの精神構造はなんとかして欲しかった。
一目惚れしたカナデを追いかけて女子高まで押し掛けたり、辺りはばからず告白して交際を申し込んだり、とにかくオレオレで押していくばかりで、相手の気持を考えずに自分ばかり突っ走るところとか、思春期という名の発情期の男子そのものだよねぇ。
周囲の男性を性欲と劣情のケダモノ扱いしてるがそういう自分はどうなのかとか、他人の目から見た自分自身がまったく見えていないという自己中心的な幼稚さが目立ちました。
逆に恋敵である九条は、文句のつけようのない好青年で格好良かった。
幼い頃からカナデへの想いを募らせてきて、誰もが認める正式な許婚でありながら、彼女の気持ちが自分には向いていないと悟ったとき、彼女の本当の幸せと立場を考え、涙を流して自分から身を引いたその潔さに感動を覚えずにはいられませんでした。
まさに精神の成熟した大人であり、彼と比べるとカルマは分別を知らないガキ以外の何者でもない。
ヒロインのカナデもどうしてこんなカルマが好きになったのか、イマイチ納得できません。
ぶっちゃけ、親の決めた婚約が嫌で、破談にできるなら誰でもよかったのでは?と思ってしまう。
だって、カルマなんて突然やってきて私生活を荒し回ってるだけで迷惑にしかなってないでしょう。
正直、カナデ自身も気に食わない。人の顔色ばかり見て話していないで、自分が嫌な事は最初から嫌だと言うべき。自分の立場がどうであれ、現状が望むものでないのなら変える努力をするべき。
清楚可憐で正統派タイプのヒロインですが、周囲に流されるばかりで主体性がなく、世の男性はそういうのが好きかもしれませんが、キャラとしては魅力はないですね。
むしろ、カルマに付き従う侍女人形のリビエラの掛け合いが面白可愛かった。
主人を主人と思わない物の言い様が非常に愉快で楽しいですね。某独逸製侍女人形の気配を感じる。
カルマが拒否しているレイナ王女にしても、さすがに後ろの穴を掘られるのは勘弁だが、本来はとても純情で可愛い娘なんじゃないかしら。カルマぐらい力を持っている魔神なら、その辺りうまくあしらえると思うんだけどなぁ。
ほんの軽くヤンデレ気味かなというくらいで、そこまで拒否感はなかった。
なんというか、主人公とヒロインだけ作者の中で理想像を作りすぎな感がありますね。
脇役は個性的なキャラ作りをしているのに、カルマとカナデだけ陳腐で違和感があるんですよ。
相思相愛になる過程も、「一目惚れ」という都合のいい言葉で誤魔化してない?
確かに、「一目惚れ」から始まる恋だってあるだろうけど、それはあくまでもキッカケで、そこから知らなかったお互いの良いところ、悪いところを認め合って、深めていくのが愛だと思うんだけれど。この二人は最後まで「一目惚れ」の時点の気持ちで止まっていて相互理解なんかしちゃいないよね?
結局、読んでいて疑問のままだったのが、作者の思う『純愛』ってなんなの? ということでした。