ダフロン

2009年04月28日

剣の女王と烙印の仔 1/杉井光

4840127557剣の女王と烙印の仔〈1〉 (MF文庫J)
杉井 光
メディアファクトリー 2009-04

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他人の命運を喰らう《獣の烙印》を持って生まれた少年クリス。彼は傭兵としてひとり戦場を放浪していたが、一人の少女との出逢いがすべてを変える。未来を予見する力と圧倒的な剣技を備え、死神と怖れられた少女ミネルヴァ。その夜、クリスに殺されるはずだったミネルヴァの運命は、烙印によってねじ曲げられることになる・・・。

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 人の幸を喰らう呪いを背負った少年と未来予知の力をもった少女が運命を切り開く剣と剣のファンタジー。

 デレ早っ! ヒロイン役のミネルヴァさーん、デレるのが早いですよ!
 出会ってわずか一晩で"でれんでれん"ですね。そこまでフラグが立つようなイベントあったかな?
 後々、思い出したかのようにツンツンする姿を見ていると、テンプレっぽくて白けてしまいます。
 クリスの方は、いつまでもぐじぐじと煮え切らなく、すぐに思考停止というか、ミネルヴァのためなら自分なんかどうだっていいやと思っている自己放棄的な言動に、主体性が感じられずうんざりしてました。
 周囲の流れに巻き込まれて、「嫌だ、嫌だ」と駄々をこねているうちに、いきあたりばったりで事態が片付いてしまう話になっているのは、どうなのかね。

 文章が上手いことは上手いし、雰囲気も出てはいますが、面白くはないですね。
 『神様のメモ帳』や『さよならピアノソナタ』のように青春臭くはなく、かといって『さくらファミリア』のようにエロくもなく、『ばけらの!』のように笑いがあるわけでもない。
 ただ普通に本格(?)ファンタジーやってるだけで、オリジナリティとか、ひねりが見られない。
 なにもかもが予想の範囲内で、先の展開を楽しみにしたり、読んでてワクワクしてきません。

 最近のファンタジーって、まずゲーム性がハッキリしてないと、作品がパッとしないんですよね。
 戦記モノなら、分かりやすい例だと、戦術・戦略的な『駆け引き』ってヤツですか。
 回復力が異常だったり、主人公補正がずるい。「傭兵の才能がある」というだけで、一騎当千の活躍ができたら、戦記ファンタジーを書く作家は苦労はしない。
 そもそも新月の晩以外は彼の能力も働いてないんですよね? ミネルヴァと出会ってからも、本当に抑えられてるんですか?
 ミネルヴァの怪力も、どういう理屈なのかしら。なにかしら別の能力を持ってるとしか思えん動きです。
 そういう並外れた能力があるのに、コルネリウスに正面挑んで操られたりとか、なにやってんの?です。

 「ここが面白かった!」、「ここが可愛かった」、「ここが驚いた!」など読者の興味を惹きつける要素が欠けていたせいか、普段なら問題にしないような細かい部分が悪目立ちしている作品でした。
 こういう批評の仕方は嫌いですが、ほぼ同じプロットとテーマの作品なら、『イングール天馬』という話の方が面白かったですね。見せ場がちゃんと書き分けられてるし。主人公はヒネクレてるけれど恰好いいし。ヒロインがテンプレなツンデレじゃないし。設定は同じくらい深いはずなのに、不思議とすらすら読めました。読後の爽快感が違います。児童書ですが、最近読んだファンタジーの中ではオススメです。

 杉井光も、いつもは好きな作家なのですが、ちょっと前の新刊の十文字青の『いつも心に剣を』と同系統の失敗をしていたかな。作品のテーマと魅力が誰にでも伝わるようにアピールできてなかった。次回はきっと読まない。

 ただし新キャラで女装美少年を出すなら読む。杉井光といえば、女装美少年はお約束でしょうが。

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posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | MF文庫J | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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