![]() | 神のまにまに!―カグツチ様の神芝居 (電撃文庫) 山口 幸三郎 アスキーメディアワークス 2009-04-10 by G-Tools |
頭上に“ヘッポコ”様なる可愛い(?)神様が乗っかっている以外は、普通なはずの品部人永。平穏な人生を望む人永だったが、ヘッポコの噂を聞いた政府からある仕事を命じられる。それは、『疲れた』を理由に人間に加護を与えなくなってしまった神様たちを説得することだった!
へっぽこだっていいじゃない、神様だもの
雲隠れしてしまった神様たちを再び人前に連れ戻すために奔走する国家公務員のお話。
神と人間の交流をほのぼのと描き、シンプルによくまとまったお話でした。
ときに人智を超えた超常現象を巻き起こす八百万の神様といいつつ、ぬいぐるみのような姿で頭の上にへばり付いていたり、田舎の温泉宿で中居をしていたり、あまつさえ信仰心のない人間たちに拗ねて、集団ボイコットしてしまうなんて、もう、お前らいい歳して子供かとw
やたらと人間臭くて親しみやすい神様たちが可愛いかったです。
ヘッポコなる女神様に愛されながら女の子が大好きな主人公・人永ですが、毎回ナンパには失敗し、美人上司にいいようにこき使われて、嫌々ながらも神様探しに向う姿には、思わず同情。
しかしながら、出張先で出会った火の女神ガグヅチさんを落とすために、町で問題となっている人間と河童の対立を解決すべくかけずり回る様には、へこたれずによくやるなぁと苦笑。
常日頃から、厄介払いしたいと思ってたヘッポコが家出し、居なくなって初めて大切な存在だったと知るものの、まったく姿形が変わって戻ってきたときには、さすがに前とは同じ扱いはできませんよね。
本当はぬいぐるみのような姿のヘッポコだとわかっていながら、超美人の姿で同じようにベタベタとつきまとってくるヘッポコの色気に戸惑う人永が可笑しい。
一連の騒動を解決に導くために、イザというときには、身体を張る勇気、そして一発逆転の作戦をひねり出す機転には、「神に愛されるほどの男」という理由がちょっとわかったかも。
ときに電撃小説大賞<選考委員奨励賞>。
昨今の電撃大賞の傾向だと、だいたい文章力が高いか大衆ウケする作品が大賞、金賞に選ばれて、ややクセの強い作品が銀賞、佳作に選ばれるカンジですが、私にとっては、受賞後のいわゆる「救い上げ作品」─(賞こそは貰えなかったものの、才能を認められて担当がつき、一部手直しをしたあとで新人としてデビューする作品)─こそが、大賞や金賞よりも楽しみだったりします。
いつもどんな問題作が飛び出てくるのかまったく読めないので、ビックリ箱を開けるような気持ちですが、今回は予想外に優等生で、作品なら大衆ウケもしやすそう。
奨励賞は、それこそ選考委員の胸先三寸ですが、平凡ではあるが、そこそこの有望株と見込みました。