ダフロン

2009年02月28日

とある飛空士への恋歌/犬村小六

4094511210とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)
犬村小六
小学館 2009-02-19

by G-Tools

数万人もの市民に見送られ、旅立ちの時をむかえた空飛ぶ島、イスラ。華やかな目的とは裏腹に、これは故郷に戻れる保証のない、あてのない旅。式典を横目にカルエルは、6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子。彼の目線は、イスラ管区長となった「風の革命」の旗印、ニナ・ヴィエントに憎しみを持ってむけられていた…。

夕陽に向かって旅立て

 空飛ぶ島『イスラ』に乗って、遙か西の果ての新天地を目指す飛空士見習いの少年少女たちの物語。
 前作『とある飛空士の追憶』は綺麗に完結していたので、さすがに今回の登場人物は別だろうなとは予想していましたが、まさかシリーズ化するとは思ってもみなかった。

 やはり大空の旅には、ロマンと男汁とその他もろもろの興奮が溢れるよ!
 大空に浮遊する島に乗って学園生活を過ごしながら新天地を目指すという、なんともファンタジックな世界観は、ラピュタ萌えにはたまらないものがありますね。まるで『魔法学園ルナ』じゃないか。
 小型戦闘機がびゅんびゅん飛び回るよりは、巨大飛空艇が悠然と雲間を行く姿が好きな私としては、願ったり叶ったり拝んだり崇めたり。
 
 ストーリーは、皇子として何不自由なく暮していた主人公カルエルが、革命で地位を追われ、養父となった飛行機整備士の元で、賑やかな三姉妹に囲まれて過ごす幼少期の話がメインです。
 この養父が、魅力的なんだよなぁ。いかにも『理想の親父』ってカンジで。娘さんたちも、突然やってきた義理の弟を歓迎し、皇子だという事実を知って驚きこそすれ笑って受け入れて。
 両親を亡くして落ち込むカルエルが立ち直ることができたのも、彼ら家族の温かみというものがあったからでしょうね。まあこう騒がしくては悲嘆に暮れる暇もなかったんだろうなと想像すると微笑ましい。

 飛空士見習いとして『イスラ』にやってきたカルエルは、高慢ちきでマザコンでナルシストなんだけれど、妙に抜けていてヘタレた少年に成長しているのが笑えます。
 幼い頃からカルエルが好きで、彼にくっついてきた義妹アリエルとの遠慮ないやり取りも楽しい。
 湖畔で出会ったちょっと天然はいった少女クレアとの今後の関係も気になるところ。
 雲海を二人乗りの自転車で駆けていく場面は、『ローマの休日』か『タイタニック』みたいでステキでした。

 『イスラ』にやってきた住民たちは、新天地を目指すという理想に満ち溢れているけれども、上層部の貴族たちは政治に負けて左遷された者たちの集まりということで、そのあたりの庶民と貴族の温度差なども懸念すべき事柄になっていきそうですね。
 作者としては今回は『ロミオとジュリエット』のつもりということですが、前作の例もあるし悲恋劇となってしまわないかが心配です。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック