ダフロン

2009年02月19日

パララバ―Parallel lovers/静月遠火

4048675184パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)
静月 遠火
アスキーメディアワークス 2009-02

by G-Tools

毎日電話で話をするうちに、互いを友人以上の存在として意識し始めた遠野綾と村瀬一哉だったが、夏休みの終わりに一哉は事故死してしまう。しかし一哉の通夜の晩、綾のもとに一本の電話がかかる。電話の主は死んだはずの一哉。そして戸惑う彼女にその声は告げた。死んだのはお前の方ではないのかと……。

 彼と彼女は世界を越えて

 まず前提として、誤解しないで頂きたいのは、この『パララバ』は金賞に相応しい作品であるということだ。
 爽やかでありながらリアリティあふれる世界観、瑞々しい感性を備えた登場人物たち、自然体で描かれた無駄のない文章。スキがなく、完成度としてはとてもよくまとまっている。
 しかし、ぶっちゃけ、小さくまとまりすぎていて、キャラもストーリーもイマイチ面白みの決め手に欠ける。
 話は上手なんですが、だからといって話が面白いのとは別だよねという印象です。

 よくも悪くも登場人物はとても平凡で、ごく普通に高校生生活を過ごしていた男女が、平行世界のこっちとあっちで殺されていて、お互いの死の原因について捜査を始めるというSFちっくミステリーですな。
 別世界という越えられない壁を挟んで、携帯電話からの声だけを繋がりに、お互いへの想いを募らせていく二人の様子が初々しく、しかし、決して結ばれない現実の残酷さには切ないものがあります。
 離れていても、ときどき恋人たちの甘いひと時もあって、鬱展開ばかりではないのが救いですね。

 なんというか、綾と一哉はどこまでもありふれた高校生の恋愛をしているんですよね。
 自分が話している相手は、本来ならばすでに死んでいるはずであるという非日常な状況にあっても、それでも精一杯、一生懸命に恋をしている。できることなら、電話越しなんかじゃなく、会わせてやりたいにしてやりたい、二人して結ばれて幸せになって欲しいと思うのに、なんて歯痒い!

 事件の構図そのものは単純すぎて、二章あたりで予想がついてしまうので、ミステリーとしてはなんとも言えないのですが、「空間」をまたいだ恋人たちのラブストーリーという見方でみると、青春小説として良作ですね。
 ただ始めにも言いましたが、話のインパクトが薄い。大部分はソツなくまとまっているが、どこも器用貧乏で読者を惹きつける魅力にとぼしいのがとても残念。新人ならば、もうちょっと個性を感じさせる"何か"を求めたい

 けど金賞は毎回こんなもんじゃないですか。こんなもんって言ったら悪いけれど、『平凡な優等生』っていったらいいのかな。とりあえず、標準以上程度の文章力を持っていれば金賞でいいかみたいな。個人的にはもっと自己主張激しい『問題児』であるほうが、文章は下手でも読んでて面白いものがあるんですがねぇ。
 まあ、そのうち化けるかもわからんので、しばらくは様子見です。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。