アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫) 川原 礫 アスキーメディアワークス 2009-02 by G-Tools |
季節は秋。相変わらずの日常を過ごしていたハルユキだが、校内一の美貌と気品を持つ少女≪黒雪姫≫との出会いによって、彼の人生は一変する。少女が転送してきた謎のソフトウェアを介し、ハルユキは≪加速世界≫の存在を知る。それは、中学内格差(スクールカースト)の最底辺である彼が、姫を護る騎士≪バーストリンカー≫となった瞬間だった――。
<ブレイン・バースト>。バーチャル世界を介して使用者の意識を一千倍に加速するアプリケーション。
『ジーンダイバー』のタイムブースターが元ネタとしか思えないが、もしくは『コレクターユイ』のコムネットでしょうか。NHKアニメ好きでなければ、おそらく通じないネタフリでしたサーセン。
ストーリーと世界観は及第点。だが、主人公・ヒロユキが卑屈すぎて好感を持ちようがない。
いや、自分を卑下するだけなら構わないんだけれども、卑屈になるあまり周囲の人間を傷つけてしまっているのにまったく気づいていないところに、すっごく腹立たしいものを感じます。
現実にクラスメイトにこんなデブがいたら私でも虐めてます。他人から向けられた優しさや真心を疑りかかって踏み躙るような最低の人間は嫌われて当然じゃない?
そんな鬱屈デブの一人称がひたすら続くものだから、読むのが辛くて、辛くて・・・・・・。
主人公に欠点があって、運動音痴でも、馬鹿でも、不細工でもいいんだが、デブだけはダメ。ゼッタイ。
先天的な要因ならば仕方がないと納得のしようもありますが、デブなのは本人の食生活がだらしないだけで、それはどうしようもなく自分が悪いわけですから。自分を卑下する正当な理由にはならないかと。
自分でもよく最後まで読めたと思います。正直、美人の先輩が脈絡もなくヒロユキに告白してきた場面で、もう読むのを止めようかと思いました。このクソブタにどこに好かれる要素があったんだろうかと、ご都合主義的展開に嫌気が差しました。先輩の側の好きはあれだよなー、一般人がスポーツ選手に憧れるようなもんじゃない?
私としては、相手の人間性が関与しない好意感情は、果たして恋と呼べるのか、甚だ疑問なのですが。ゲーム世界と先輩は魅力的でした。それだけです。
と、ここまでの感想で、主人公がいかに豚野郎かについて熱く語ってますが、真面目な話、印象に残っているのがそれだけなんですよね。改めて読み返すと、評価できる点はいくつかあるのですが、それらを打ち消してあまる減点をブタにつけています。
一人称視点での物語のセオリーとして、主人公は基本的にどんな読者からも好かれるようなキャラメイキングをしないと、失敗します。卑屈なキャラを描きたいのなら、正反対に陽気な脇役を絡ませた三人称視点にしてバランスを取るべきですよ。
ネット上で人気のウェブ小説家のファンをそのまま取り込みたいという編集部の意図が見え隠れするんですが、なんだか最近の電撃大賞は個人的に反りが合わない作品が多いなぁ。
まあ巻末の川上稔の短編とイラストだけを目当てに買ったようなものかな。やっぱり文章としての面白さが違うわ。そしてシルバー・クロウかっこえええええええ!!
いきなり1巻と銘打ってますが、2巻は買わない。
蛇足だけれど、話の穴。アッシュ・ローラーはどうしてバイクから降りたんだろう。なにもしなくともあのまま時間切れになれば判定勝ちだったのに。でっかい謎です。
先天的に太ってる人もいるし、体質的に痩せれない人とか、そういう人もいるので、一様に太ってるのは食生活だけのせいじゃないです。
本の主人公がどうなのかは知りませんが、とりあえず、それだけ。
デブでどうしようもないいじめられっ子が突然力を得るなんて展開はそこら中にあるのでは?
この作品はサイバーパンク系ですからなおさら。
主人公の普遍性よりもこの場合は寧ろテンプレ的な登場人物であることの方が問題だと感じます。
卑屈ばかりでイライラする…!人の好意も素直に受け取らない。トイレに閉じこもるっておまえはバカか!努力しろ!
主人公は読者の分身というか感情移入していきたいものなんでこれは読んでて辛かった…文章はうまいしストーリー的にはこういう主人公のほうが適しているのかもしれませんがダメでした、二巻は買わないな…
>匿名希望さん
確かに決めつけはよくなかったと反省しています。
まあ文中でも主人公がどうして太ってしまったかについては、理由は深く書かれていません。
ただ先天的な遺伝の問題である場合は、それなりの医療機関による治療が必要ですし、体質的に太りやすい人でも、適度な運動とカロリーコントロールで改善はある程度可能なはずですが、それらしい努力をしている形跡が見受けられません。
素人考えの無茶な絶食ダイエッドに失敗して、それっきりダメだと思い込んでるカンジですね。
この主人公については、太るべくして太っているだけだと感じるのは私の決め付けでしょうか・・・。
>_さん
『鉄のラインバレル』とかもこのパターンですよね。
力を手に入れてまず考えることが、いじめっ子に仕返しとか、小さすぎると思います。
テンプレートかどうかを言い出したら、キリがないので、そこは追求しないようにしています。
ただ設定はテンプレでも、描写とキャラさえ面白ければ、いくらでもワンパターンで構わないのですが、そこが欠けているとどうしようもないなぁと。
>白さん
卑屈な主人公も、それはそれでありだとは思うんですよ。
例えば、スーバーダッシュ文庫の『アクマ・オージ』の主人公も、かなり自虐的です。
しかし、友人思いで、いつも周囲の人間のために血を吐くほどの努力をしている。
性格も実にイイ奴で、かなりカッコイイです。こうなると逆に卑屈さが面白さになります。
やはりなんの努力もしない人間が、ただ愚痴っているのを延々と見せられても・・・ねぇ
まあ、かいつまんでいうとその通りです。
非モテ要素だらけな主人公が急にモテ出すのが、納得いかなかったっていう。
成長期の食生活は親が居なければレトルトや菓子類など偏った食事になり肥満の要因になりえます。
また精神面へのストレスから過食症になる場合もあります。
主人公の肥満設定には十分な描写ではないでしょうか?
私は1巻しか読んでないので、ハルユキの家庭についての設定はわかりませんが、肥満が仮にストレスからくる過食症だとしても、何故、主人公を肥満にしたのかという根本的な疑問が解けないですね。
一般的にいまメタボリックって言葉はイメージ悪いじゃないですか。もちろん、体形だけを問題視しているのではなく、性格の卑屈さや思いやりのなさもマイナス要因ですね。
まず真っ先に読み手に受け入れられるべきキャラである主人公を、どうしてそんな造形にしたのか、そこが私がこの作品を嫌うところです。
アクセルワールド1巻を読み終えたとき三つの疑問を持ちました。
一つ目にブレインバーストを始める理由
二つ目にブレインバーストを続ける理由
三つ目に幼馴染のタクムを許して仲間にした理由
物語が始まった時点の主人公は、中学校に入学して一ヵ月、幼馴染二人と離れ、デブ体型でイジメに遭っている少年である。
物語が終わった時点で、そして表面上の感情を廃し、ブレインバーストをただのゲームとして状況分析すると分かり易い
先輩からはゲーム内での揉め事を解決する為に利用され、その立場を受け入れている奴隷の様な関係。幼馴染のタクムをゲームの利益の為に盗聴行為を許してゲームのギルドに引き入れた。
現実よりゲームを優先した行動、完全にネトゲ廃人である。
顔役の先輩のお陰でイジメは無くなったが体型はそのまま、バーストポイントを失い現実に引き戻されれば今の仲間は離れていくだろう。そうして見ると状況は悪化している。
イジメやデブは現実からゲームへ逃げる為の理由となり、ネトゲ廃人となった主人公は幼馴染を許したとして理屈が合ってしまう。
読了後、表面上覆われた気持悪い関係を意識していない部分で受け取り、
卑屈でイライラ、イジメられても当たり前な主人公として感じ取ったのではないだろうか?
*ブレインバーストはソフトウェアである。ハードウェアは既存のものであり、時間加速は仕組みさえ解明されれば将来的に別のプログラムで制限無く使用可能になる。
*知り合いでもない相手から転送されたEXEファイルをPCに詳しい人間がメインマシンで開くだろうか。
*ブレインバーストのプレイヤーはネットの利用に制限がかかる。
*ブレインバーストの時間加速に副作用の危険が想定される。
*時間加速を使って得た経歴も事が公になれば社会的責任を負う可能性がある。
以上の点から、ブレインバーストを普通の主人公がやるわけが無いのである。
作者はMMORPGを題材とした作品で評価されている。ネットゲームをしている人間なら違和感を感じる設定に思う。そんな簡単な間違いをするだろうか。
逆に上の問題が隠れた条件と考えてみた。ブレインバーストは各種の問題があるにも関わらずプレイする人種、
「社会的に抑圧され、強い願望、欲望を持った人間」であるとして読み解いてみた。
その根拠に願望や欲望がキャラクタ設定に強く影響している
シルバークロウは頭が大きくシャープな体型、痩せたいと思う願望
アッシュローラーは大型バイクにドクロのヘルメット、自分をアピールしたい人間のステレオタイプ
シアンパイルは槍を装備した甲冑姿、姫を守る騎士の姿、幼馴染チユリの理想の一番となりたい願望
ブラックローターは自分の姿を醜悪の極みと評価している
ブレイバーストは、願望や欲望をぶつけ合い戦う。そして、戦いを通じて悩みを乗り越える。という隠されたテーマがあるのではないでしょうか?
主人公とタクムは最後の戦いでタクムを倒すのではなく許して仲間にした。チユリに全て話し昔の3人の関係を取り戻したことでタクムは歪んだ愛情を乗り越えたと言える。
これらの仮定から、主人公が何かしらのマイナスイメージな設定を持つのは必須条件になってくる。願望の強さがキャラの強さに説得力を持たせる事になるので、導入部分で主人公を受け入れにくい内容で描かれるのも必要になるだろう。
アッシュローラーがバイクが使えなくなった時、勝敗に関わらず自ら降りて戦う選択をしたのも、別の意味を持ってきます。
逆に、「これらの問題を抱えてもプレイする事を選択する必要があること」が隠れたプレイヤー条件ではないだろうか?登場する全てのバーストリンカーは個々の問題を抱えている。
デュエルアバターはプレイヤーの欲望を反映して作られると作中で明言されている。
シルバー・クロウは頭の大きいシャープな体型、ハルユキの痩せたいという欲望
アッシュ・ローラーは大型バイクにドクロのヘルメット、自分をアピールしたい人間のステレオタイプ
シアン・パイルは槍に甲冑、姫を守るナイトの姿、タクムのチユリへ一番の存在になりたいという欲望
そしてブレイン・バーストはプレイヤーの欲望と欲望をぶつけ合い戦うゲームと言える。ラストバトルでは
「タクムのチユリへの歪んだ愛情vsハルユキの痩せたいという願望」
が争いハルユキが一方的にやられた。そこに先輩を助けたいという想いが重なり飛行能力を発現させ逆転した。
ハルユキはタクムを倒すのではなく許し仲間にすることを選択し、全てをチユリに話す事でタクムは歪んだ愛情を解消し、幼馴染3人は昔の関係を取り戻すことができた。
この流れから裏のテーマが読み取れる。
「ブレイン・バーストはプレイヤーの欲望と欲望をぶつけ合い戦う。その戦いを通して欲望の元であるプレイヤーが抱える問題を乗り越える」
さて、これらの設定から主人公はバーストリンカーなので何らかのマイナスイメージの問題を抱える必要がある。欲望の強さ=デュエル・アバターの強さの説得力につながるのだから、読者は主人公は抱えた問題を体験し説明される必要がある。
「作者は読み手がイヤなイメージを持つように主人公を書いたのである」
作者は肥満とイジメというマイナスイメージを設定しました。それは何故でしょう?私は「本人の責任では無い」と言う理由だと思います。中学一年生、登校一ヶ月目なのですからほぼ小学生です。食事の管理、食育は親の責任であります。マイナスイメージにしても受け入れやすいものを選択したのでしょう。
最後にアッシュ・ローラーは自分の欲望から生まれたバイクが動かなくなった時、勝敗に関わらずバイクから降り身一つで戦う選択をした事で何かを得たのではないでしょうか?
私は、このように本作品を読み解きました。
管理者の愛咲優詩さん、他の読者さんに悪いイメージだけでなく何か伝わることがあれば幸いです。
長文失礼しました。
お前には人の心がないのか。
という感想に対する感想