ダフロン

2009年02月04日

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳/石川博品

4757746474耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫)
うき
エンターブレイン 2009-01-30

by G-Tools

僕レイチ。今年から“八高”に入学する本地民(コネだけど)。植物でも愛でつつ妄想の中で暮らしていきたかったのに、クラスメイトは王国民流モラルハザードなヤツばっか! とくに何、この幼女? 耳刈? ネルリ? せっかくの高校生活、痛いのはイヤ―!(耳だけに)

 はじめて八高物語

 諸国の王族ばかりが通う"八高"で、個性豊かなクラスメイトたちが繰り広げるドタバタ学園コメディ。

 某国の独裁者の王女様やら、一夫多妻制の国家から妻連れでやってきた旧王やら、ヘンテコな冠かぶった三人娘やら、野心家な本地民の委員長やら、生まれた国や文化もごった煮なクラスメイトたちの中に放り込まれた主人公・レイチが語る学園闘争の日々とでも題せばよいのでしょうか。

 レイチが所属する十一組は、みんな仲良く和気藹々としたニコニコ学級。
しかし、学園内では、共和制を布く本地からきた本地民が運営する自治委員会と、独立した国家群からやってきた王国民が率いる学生防衛隊とで対立の火種が燻っていて、見えないところに存在する悪意や差別があったりと、決して面白可笑しいばかりでない重苦しい要素も加味した内容となっています。

 クラスメイトと比べるとレイチは一般ピープルではありますが、話が進んでいくにつれて、バカな妄想ばかりしているお調子者という正体が読み取れるかと思います。何気にコイツが一番、変だよ!
どんな場面でも、その場のノリとハッタリで突っ走るために、新たな騒動の原因にもなりかねないのですが、そんなレイチの勢いに、感染していくバk・・・・・・ゲフンゲフン・・・・感化していく同級生たちの間に絆が芽生えていくところに感動しました。

 それぞれの故郷の国の風習や文化の差に驚きこそすれ、本地民と王国民で態度を変えずに、相手がどんな立場であろうとも間違いを訴え、自分が正しいと思ったことを貫く姿勢は、ただの日和見主義のお調子者にはできませんよ。
物語のメインは耳刈ネルリという独裁少女に視点をあててはいるものの、レイチ本人も非常にユニークなキャラの持ち主で人間的魅力に溢れています。

 上昇志向が高いようで友人を捨てきれないカミレ、普段は女性好きなのにいざというときに友情を優先できるサンガ、ネルリの護衛役で堅物だけれど主人想いなナナイなど、通常なら憎まれ役どころの人々たちも、なかなか好感がもてました。

 キャラのアクが濃い印象があり、語り手のレイチの一人称が受け入れられるかで、意見がわかれると思いますが、個人的にはとても面白かった! 今年になって初のイチオシです!

 ときに「八高」は旧制高等学校のナンバースクールからきているんだろうか。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(1) | ファミ通文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Weblog: ただ、それじゃ終われないでしょ!
Tracked: 2009-02-05 22:25