ダフロン

2008年12月17日

さよならピアノソナタ 4/杉井光

4048674293さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)
植田 亮
アスキーメディアワークス 2008-12-05

by G-Tools

冬。真冬の誕生日とクリスマスの季節。ナオはその機会に自分の想いを言葉にしようとするが、神楽坂の思惑や千晶の想いに翻弄され、なかなか一歩が踏み出せない。一方で再度のライブに向けてフェケテリコは練習を開始する。そんな中、真冬の身に異変が起こり―。

黒歌鳥は鳴りやまない

 恋と革命と音楽が織り成す青春グラフィティ。完結編。

 素晴しいフィナーレでしたー! いますぐ立ち上がってスタンディングオベーションだよ諸君!
真冬への想いにようやく気づき、両思いなのにいつまで経っても肝心の一言が口に出せないナオの優柔不断さと、あろうことか千晶に真冬への誕生日プレゼントの相談を持ちかける鈍感さは、いまさらながら救いようがありませんね。あまつさえ二人とも同じプレゼントとか、これはもう怒っていい。誰だってこんなことされたら傷付きますよね。

 ヘタレのナオと奥手な真冬だと、一向にお互いの距離が縮まらなくてじれったい。
音楽でならいくらでも気持ちが通じ合えるのに、音楽なしではうまく想いを言葉にできない二人の初々しさにしばらく悶え転がってました。この二人にいまさら音楽なんて必要ないだろうと、もどかしくて、もどかしくてどうにかなってしまいそう。でも、そうやって素直になれなくて勇気をだせなくて、あとになって後悔したり懊悩したり切なさに身をよじらせたりするのも恋愛の喜びではないかな。

 フェケテリコがライブに向けて練習を重ねなければいけない時期に、神楽坂先輩はなんつータイミングで爆弾発言をかましてくれちゃうのか。まさに熱き闘争の革命児。突然の豹変振りに怖ろしさを覚えなくもなかったですが、あの演説にどこか強烈に牽きつけられてしまう自分がいる。先輩も立派に恋する乙女ではあるんだけれども、女らしさよりもそのみなぎるカリスマ性とカッコよさに惚れます。

 少しくらいぎくしゃくしていても、曲が始まれば繋がり合える。フェケテリコに明るい希望が開けているかに見ていただけに、それが閉ざされてしまったときは、たまらなくやるせなかった。
翼のひとつを失ったフェケテリコだけれど、そこで墜落することなく立ち上がり、がむしゃらになって練習にうち込む3人の姿が印象的でした。大切な仲間がいない。その憤りと悲しみをぶつけた最後のライブシーンは、言葉では到底言い表せない感動の波に奮えました。

 恋愛も音楽も理屈じゃないんですよね。こころの内側から湧き上がってくる本能。音楽で人と人とが繋がって、そこから恋が生まれて、また音楽が生まれて、永遠に続いていく。それが訪れた時、その人にはきっと世界が一変して見えることでしょう。それが子供から大人への革命なんだ。
物語を読み終わっても、最後の一音がこころの中で鳴り響いて、いつまでも美しい余韻に浸る。
これだけの作品を一年で書き上げた作者には、お疲れ様でしたの言葉を。また是非ともアンコールで短編とかよろしく。

ところで、この巻の真のヒロインはユーリだったと思うんだ。性別:ユーリ、余裕です。


posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
シリーズ読んでる途中は読むのが苦しかった時もありました(といっても二日で全部読んだんですが)
でも最後でハッピーエンドって叫ぶくらい満足の終わり方ですね。
むしろ主人公たちにとってはハッピースタートなんでしょうが。
Posted by ちけっつ at 2008年12月20日 18:53
二日で4冊はなかなか早いペースですな。
確かに結末は、エンドというよりも、これからが出発って感じの結末でしたね。
それにしても、よく1年でこれだけのものが書けたと思います。
もともとミュージシャン志望で、作品の下地となるものあったからなんでしょうね。
杉井光さんは、そういう引き出しが多いから、色んなジャンルを楽しめるのが魅力ですねぇ。
Posted by 愛咲優詩 at 2008年12月21日 02:16
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