ライトノベル文学論 榎本 秋 エヌティティ出版 2008-10-27 by G-Tools |
ライトノベルはいかにして、ライトノベルとなったか。他にはない特徴を明らかにし、話題のジャンルのヒットの仕組みを探る。
『ライトノベル・データブック』の著者が書いたライトノベル指南書。
タイトルに"文学論"とあるが、どこがどう「文学を論じている」なのか、よくわからない。
この手の読本系はだいたい、ライトノベルの歴史を語る→『スレイヤーズ』賛美→最近はメディアミックスすごいよ!(゚∀゚)のパターンでいつも帰結するよなと。
とりあえず、これを買うかどうか迷っている方はまず本棚を見渡して、新城カズマの『ライトノベル「超」入門』、大森 望・三村 美衣の『ライトノベル☆めった斬り!』、日経BP社の『ライトノベル完全読本』、三冊のうちどれかをすでに所持している状態なら、購入しなくてもいいと思います。
書いてあることは、たいして変わり映えしません。まあ具体例として引用してある作品のタイトルをやたら細かく記述してる点がしっかりしてるなと感じるくらい。
まあ若干、最近の出来事も書かれているので、気になるひとはどうぞ1600円払ってください。
以下、すべて蛇足。
◆序章・ライトノベルの定義
ライトノベルの定義について、ネット界隈でしょっちゅう議論されているいろいろな定義を挙げていき、本書においては「中高生をターゲットにした読みやすい娯楽小説」として扱うとなっているが、あからさまに明言をさけてますね。
こういう逃げ腰な意見を見るたび、もっと個人の意見で決めつけてもいいのにと思うのだけれど。
当然、他人を納得させられるだけのちゃんとした裏づけ、理由、理屈が必要なわけですが、そういう主義主張を積極的に提起するのが、「論」じゃないのかと。
ちなみに愛咲優詩が論じるライトノベルの定義は↓
『小説をプラットフォームとして位置づけ、エンターテイメント志向・キャラクター重視・表現の自在性といったライトノベル本来の特性を活かす思想に則って提供されるコンテンツの次世代フレームワーク(ライトノベル2.0より抜粋)』
◆第一章・ライトノベルの歴史
ライトノベルの歴史をお約束のように挙げているが、他の読本系と内容はあまり変化がない。
ラノベの黎明期がソノラマ文庫のSFから始まったことは知っているが、そもそもソノラマ文庫の本を一冊も読んだことがないのでなんともいえない。
やっぱり『スレイヤーズ』『ロードス島』世代の自分としては、その黎明期が明けた後の「角川・富士見の時代」こそがライトノベル元年ですね。
というか、『フォーチュンクエスト』、『風の大陸』、『カイルロッド』、『無責任館長タイラー』、『魔術師オーフェン』、そこまで1990年代の作品を語るなら、『宇宙戦艦ヤマモトヨーコ』を挙げようよと思ったり。
角川・富士見の「ふたり勝ち」の時代から、電撃文庫がトップレーベルの座を奪えた理由が、電撃大賞での新人作家の起用であるとしている分析は非常に納得がいきます。
無名でも面白い物語を書ける人間の本は、躊躇わずどんどん出版しなきゃ何も始まりませんよね。
角川・富士見がやらなかったジャンルにも挑戦していってライトノベルの多様性を広げていったことが結果的に勝敗を分けたのでしょうよ。
角川・富士見は、いまだに自分たちの作ったテーマに縛られているような印象をうけます。
そして2005年以降〜ラノベ業界の未来については、レーベル乱立による「パイの奪い合い」になると仰っていますが、そこからもう一歩進んだ予想をして欲しかった。それこそ読本系では、繰り返し書いてあることじゃないですか。
私なら、「パイの奪い合いになる」と誰もが考えているこの状況だからこそ、レーベルの特色に偏らない作品で勝負をかけますね。これからはレーベル色よりも、むしろ出版させる作者色がキーになるんじゃないかと。
持っているカードがどんどん弱くなっていくなら、思い切って場に捨て新たなカードをドローすべき。
◆第二章・『スレイヤーズ』でライトノベルを計る
『スレイヤーズ』の特徴=ライトノベルの特徴と定義して、ファンタジー、SF、ギャグコメ、恋愛、学園モノ架空歴史、セカイ系といった十六のジャンルが、どのくらいその特徴に当てはまるか得点をつけるという、非常に奇妙なことをしているように見えるが、なんだこりゃ???
ラノベは複数のジャンルを合わせ持つマルチな小説だから、確実なジャンル分けはできませんよ?
ジャンルは同じようでも作品ごとに人気はピンキリだし、面白さはジャンルで決るものではもない。
「ミステリーはライトノベルには向かない」といっておきながら、ベストセラーばかりなのは何故?
富士見ミステリー文庫が衰退していったのはミステリーだったから?
それは違いますよ、むしろミステリーとかけ離れていってしまったからこそ衰退していったワケで・・・・・・。
(詳しくは、富士見ミステリー文庫の敗北を参照のこと)
ジャンルごとに分析するといって、実際は自分のオススメ作品を紹介したいだけなんじゃないのかと。
いや、そのラインナップは納得です。いいチョイスしてると思いまふ。
というか、ジャンルという切り口で作品を計り始めたら、川上稔の『境界線上のホライゾン』は?
あれは、剣あり、魔法あり、ミステリーあり、SFあり、ロボットあり、セカイ系あり、架空歴史あり、恋愛あり、ギャグコメあり、学園あり、性的表現あり、作者の個性プライスレス!
少なくとも10以上のジャンルにあてまはる、とんでもなくマルチジャンルな作品なのだが・・・・・・。
そういう意味では、ライトノベルの特徴をすべて備えた、これ以上ない完璧な作品なのかもしれない。
改めて川上作品の凄さがわかりまそた。
境界線上のホライゾン 1上 (1) (電撃文庫 か 5-30 GENESISシリーズ) 川上 稔 by G-Tools |
◆第三章・ビジネスという側面からのライトノベル
レーベルごとの年間の発刊総数が載っている表が、なかなか興味深い。
単純に一年間にどれだけの本を出版できるかがレーベルの力だといってもいいんじゃないでしょうか。
2007年について言えば、
1位、電撃文庫 163冊
2位、富士見ファンタジア 109冊
3位、ファミ通 88冊
それ以外は、50〜60の間で団子状態というところか。
ファミ通文庫は、ノベライズばかりに思われがちだが、いまではオリジナルも他のレーベルを食う勢いですからね。GA文庫とHJ文庫もほぼ角川スニーカー文庫・MF文庫と並んでいるわけで、まだ業界2年の新参ですが立派に踏みとどまってますね。
メディアミックス展開についての記述はどうでもいいですが、書店の棚置きのお話は面白い。
電撃文庫で、いわゆる販売実績の高い本屋には、新刊が優先的に配本されるという「電撃組制度」のことです。これは読者にとっては、本屋選びの重要なポイントになるんですよね。
発売日当日に置いてある本屋というのは、実は結構少ないものです。
商売だから当然、ビジネスと結びついてライトノベルは様々なメディアの方向へ広がっていくわけですが、広がりすぎて糸の切れたタコのようにコントロールできなくなって商品開発もグダグダになって、消費者も購買意欲が萎えていく、なんてことにならなきゃいいですが。
ラノベ原作のゲームは、もっとゲーム要素をしっかり作りこんでください。やっててすぐに飽きます。
読み終わって、また読み返して悩むのだが、やはりどこに著者個人の「論」があるのかが見つけられない・・・・・・。ただライトノベル業界の近況を報告しているだけですね。
ですよね〜 特に世界観とギャグがw
自分もブログでファンタジー小説作ってますが、内容を考えるとき、彼の凄さが実感できますね
やっぱり、面白い物語を作るには才能がいるのかorz
自分がラノベ買ってる店は、大体3日ぐらい遅いですね
今度別の場所に行ってみよう
本当はシンプルなストーリーが一番読みやすいのですよ。
でも、それだと作家の実力が面白さの全てになるので誤魔化しが効かなくなりますけど。
私はラノベは最近は全部Amazonで買っているから、本屋巡りはしてません。
前の地元でいくつか常連で通っていたところは、1日か2日で置いてありましたね。
今度、Sky Flowerさんのの小説も読みにいきますね。