ダフロン

2008年10月26日

どろぼうの名人/中里十

4094510974どろぼうの名人 (ガガガ文庫 な 4-1) (ガガガ文庫 な 4-1)
中里十
小学館 2008-10-18

by G-Tools

美しい古書店店主・川井愛は私を欲しがり、姉は彼女に私を差し出した。川井愛との不思議な生活。飽きられないように、愛し続けられるように。私は、姉の命を守るために、姉にいわれたとおりにつとめを果たさなければならない。

少女はお姉さまに恋してる

ガチ百合。だが、非常に難解な文学作品を読んでいるような錯覚におちいる。あくまでも錯覚だけど。

大好きな姉の願いで、とある古書店の女主人の「妹」になって欲しいと頼まれた15歳の少女・初雪が、仮初めの"姉妹生活"を送っていくうちに、次第に相手の女性のことを愛するようになっていくというお話なんですが、これは読む人によってはかなりの地雷になりかねません。
私も好きか嫌いかと訊かれると、はっきりとは答えにくい。でも、友情に逃げない百合モノはいい。

初雪の独白形式で描かれる美しい年上の女性との同棲生活の様子は、ふわふわ、ぽわぽわした中にも打算や嫉妬が渦巻いていて、女心の複雑さというものを見せつけられる。
純朴な顔で川井親子の心をオトしていく初雪は、天然のようでなかなか計算高い。
実姉のいいなりかと思えば、その実姉の好意すらコントロールしているフシが多々あります。
熟女から幼女まで、美女・美少女を誘惑しておいて、しらっとしている悪女ぶりに惚れる。

というか、ツインテールっ娘が可愛すぎて悶えます。
離れて暮らす母親のそばに突然居座った初雪に対し、初対面でこそ冷たく接していたものの、訪れるたびに初雪とも会う機会が増え、いつの間にかメールを交換し合うような関係になり、想いを抱くようになってからは、あまりにも初々しいツンデレっぷりに鼻血噴いた。
ロリコンにとって、この小学5年生の存在は、もはや凶器を通り越して大量殺戮兵器。
やはり百合小説はローティーンの女の子同士でやるもんだと思う。

しかし、娘の態度はあんなにわかりやすかったのに、母親の方はいつまでもキャラが掴めなかった。
大人の余裕を描こうとしているのかもしれないけれど、むしろちょっと不気味さが先にたった。
世界観も妙な背景が設定されていて、わかりにくさに余計な拍車をかけていたかも。
キスは許される。けれどそれ以上の関係になったらさようならというのはとてもプラトニック。
けれど本音を言えば、さらにその先の展開があってもいいんじゃないかと。

作者を詳しく調べてみると、これまで同人で百合小説を書いていた人だそうですので、次回も百合でいいですが、もっとわかりやすいものを期待。

追伸:
むしろ本編よりも最後のあとがきの方が笑ったし、印象が強い。
たぶん、この本よりも『ドラえもん』や『アクエリ』の方が後世に残ってる可能性は高いと思うぞ!w
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
作品はともかく。
知り合いだが性格が悪い。だからこそ作品が書けるのだろう。
さて作品。基本レズにしろホモにしろ一つの不可能に限りなく近い夢にすぎない。だからこそ素晴らしいのだ。だが、その底にあるのは普遍的な恋愛に過ぎぬ。恋愛を構成するやりきれなさや切なさ。いかにそれらが絡み合ってスパイスを作り出すかだろう。要は楽しい恋愛小説だ。レズはかなわなさという点でまあ苦いスパイスが使いやすい。あとは少女特有の残虐さ賢さ現実的思考。こうしたものをもっと組み込めるかがキーとなる。まだ詰めが甘ったるい気がする。
しかしながら…現実の作者知ってたらがっかりしますね。つい穿って見てしまうな。

Posted by ひょこ太郎 at 2011年12月29日 02:44
>ひょこ太郎さん
お知り合いでしたか。
まあ作品が面白ければ作家は別にどうでも……。
人気作家の中には結構変人や問題児も多いですし。
常識の枠からズレたところに新しい感動なり面白さがあるのでしょう。
Posted by 愛咲優詩 at 2011年12月30日 05:09
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