![]() | 影執事マルクの手違い (富士見ファンタジア文庫 て 1-1-1) 手島 史詞 富士見書房 2008-10-20 by G-Tools |
不運な星の下に生まれた「影使い」の少年マルク。当主暗殺のため乗り込んだ屋敷で返り討ちにされ、「命令に背いたら即死」という、絶対服従の執事契約にサインするハメになり・・・
少年執事は、影のごとく
無表情で何を考えているのかよくわからないお嬢様と元暗殺者の執事さんのお話。
ターゲットにまったく気づいてももらえずに暗殺に失敗し、執事として雇われることになったマルク。
絶対服従、逆らえば死という契約書にサインしてしまい、「本当は貴方の命を狙いにやってきた暗殺者なんです」とは言い出せなくなり、なし崩しに執事として屋敷で暮し始めるうちに、いつの間にか紅茶を淹れたり、調度品を磨き上げたりと、使用人の仕事に馴染んでいる自分を発見して当惑して落ち込む姿がなんとも可笑しい。
変わり者だらけな屋敷の人間と比べて、常識人なだけに苦労性というか、いい人すぎる。
食の細いエルミナの身を案じたり、メイドのアイシャの失敗を毎度フォローしたり、暗殺者のくせに妙に世話好きですね。「裏でいろいろ企んでいるように見えて、実は何も考えてない」と言われていますが、生来、お人好しで能天気な性格なのかもしれない。
幼少時から職を転々としてきたお蔭でいろいろ物知りだし、器用だし、屋敷を切り盛りするスキルも高くて、暗殺者よりよっぽど天職じゃないのと思ったり。
それまで家族や友人といったものを持ってこなかった彼にとって、次第に屋敷の人々が大切な存在になっていき、自分を信頼してくれている彼らに秘密を抱えることに一時は懊悩したりしたけれども、逃げ出さずに素直に真実を告白して、その上で認められようとしたことは間違いではなかった。
というか、あれだけマルクのいいところを見せられたあとで、「暗殺者だったんです」といわれてもだからどうした?って気になっちゃいますよね。
何故、こんなに広い屋敷に住んでいて、天涯孤独なのかという過去が徐々に明かされていくエルミナでしたが、
無表情クールビューティぢゃないじゃん!全然笑ったりできるじゃん!
もしかして、いつもの顔は無表情じゃなくて、ただぼーっとしていただけなのかしら。
マルクが初対面で命を狙ってきたことさえも気づかなかったし、すっごい天然さんなのか!?
エルミナのアイシャやマルクに対する態度も優しくていいなぁ。
デビュー作よりは砕けていて読みやすく、面白さと親しみやすさが調和していて大変よかった。
張った伏線を次回にどう展開していくのかに期待が高まる。