![]() | ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫 J も 2-1) 森田 季節 メディアファクトリー 2008-09 by G-Tools |
(あらすじとか省略、もうメンドくさい)
この本を読んで自分は不条理系が嫌いではなかったと気づいた。死ぬほど大嫌いだった。
過程がすっぽぬけて、いきなり結果を差し出される書き方が不愉快。
たとえば、どうして左女牛の携帯に神野から電話がかかってくるのだろうか。
それまでまったくと言っていいほど交流のなかった相手なのに、いかにも唐突でしょう。
怪談や都市伝説に詳しかったから? けどちょっと人より知っている程度でオカルト専門家でもない相手に、あそこまで自分のプライベートを話そうとするかなぁ。
おまけに神野って少年は、自分の悩みを積極的に他人に打ち明けるキャラにも思えない。
むしろ誰にも相談せずに自分で考えて、自分で答えを出して決着をつけようとするタイプじゃないか?
作者の脳内では話の整合性が合っているつもりなのか、意図してやってるとすれば何を狙っているの?
不条理系は、一見、斬新だが、それは話が文字通り論理的ではなく、流れに脈絡がないからです。
過程があって、結果があるのが物語。中には過程と結果がしっかりと結びついている作品もあるのかもしれないけれど、不条理系は総じてルールを無視した邪道なんですよ。
イケニエビトとタマシイビトの生態については、「そういう仕様だから」で納得できなくもないです。
でも、そういう常識的でない設定を立てたのなら、もっと細かく掘り下げて、詳しく背景を描くべき。
でないと、まったくリアリティがない、表面だけで中身が空っぽなキャラクターになっている。
そして短編ごとの登場人物たちの独白がまた非常にウザい。
なにかというと決め付け論理ばかりで視野が狭く、思い上がりも甚だしい。
とくに左女牛は、「男の子なんてみんなじゃがいもで、男爵芋か、メークインかの違いだけ」とか、
そう言い切れるほど、この女は、男を見てきたのだろうか。
そして男を見下せるほど自分がイイ女である自信があるのかと問いたい。
以降もニヒルを気取って何事にも達観したスタンスをとっているのは、彼女の場合、臆病の裏返しだ。
八方美人なカン違い女ほど、見ていてイライラするものはない。
というか、ぶっちゃけると、プロットそのものに面白味がない。
「イケニエビトは殺されても生き返りますー殺した相手以外はイケニエビトのことは忘れちゃいますー誰かに殺されないとタマシイビトに殺されて記憶を奪われちゃうんですー」なんて、どうみても毒電波を受信してるでしょう。
この設定を聞いた人が、果たして興味をもってくれるだろうか。
これで爆笑必至なラブコメだったら、それはそれで超展開だが、少なくともキャリアのある作家ならこんなダサいあらすじはありえない。
話の構成にしても、書き出しの部分からもうパルプンテで話についていけない。
なんというか、作者のひとりよがりな威勢ばかりが感じられてきて息が詰まります。
回想メインの長編なら、モノローグの一番最初に、この小説はどういう話になるのかというガイドラインを載せるべきなんですよねぇ。それだけでも先の展開への理解度が違ってくるし。
文章力はあるんだから、小説を書くなら、もっと読者のことを考えて欲しい。