![]() | “文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫 の 2-6-8) 野村美月 エンターブレイン 2008-08-30 by G-Tools |
「作家にならなくても一緒に居る」そう告げたななせに救われた心葉。だが、そんな二人の仲を流人が脅かす。そんな時、空っぽの家に切り裂かれた制服だけを残し遠子が姿を消して・・・。
それは青いすみれの季節
"文学少女"が紡ぎ出す、青春モラトリアム・ミステリー。完結。
読み始めるまではちょっと覚悟が必要だったのですが、ページを繰り出すとまさに怒涛の急展開でエピローグまで余裕でした。とても濃密な時間を味あわせていただきました・・・。
上巻あれほど恐ろしかった流人くんが、ただのヘタレに・・・。
琴吹さんにしてきた事を考えるとムカつくが、なんだか妙にカワイイなコンチクショウ!
散々、心葉の周囲を引っ掻き回しておいて、いまさらその情けない様はなんだとツッコミたくなりましたが、そんなダメ人間を愛するヤンデレ竹田さんのNiceBoatっぷりには、言葉を失うしかなかった・・・・・・。
もう他人に迷惑をかけない範囲で好きなだけイチャイチャしてなさいこのヤンデレカップルめ。
というかこれは本当にライトノベルですか?
ティーン向け小説で、ここまで人間のぐちょぐちょした感情をリアルに描写するっていうのはスゴイ。
それでいて甘く切なく、透きとおるように澄んだ情景に映るのだから野村さんの表現力には脱帽です。
登場人物たちが抱く思いに、読んでいて何度、胸を締めつけられる痛みに駆られたことか。
作家としての孤独、男女間の愛と憎しみ、そして満たされぬ愛への渇望。
それらも最後は幸福の中で溶け合って美味しいスープになりました。
心葉も琴吹さんをとるか、遠子先輩をとるか、途中まではいつものようにうじうじと悩んでいましたが、それでも遠子先輩と叶子さんとの繋がりを見抜いたことからの名推理はすっげーかっこよかったです。
それまでは完全にバッドエンドに思えていた遠子の両親の事件が、心葉の解釈で違った結末になってしまうんですから、ここにきてようやく主人公の面目躍如というところですね。
彼もやっと辛い現実から眼を背けず、『真実と向き合える人間』へと成長したのでしょうか。
ただ心葉は琴吹さんの扱いについてはズルいと思うんですよね。
回想シーンを読むと、心葉の気持ちは最初から遠子先輩にあったんじゃないかと思うんです。
たまたま落ち込んでいたところを琴吹さんに優しくされて、「作家にならなくてもいい」と言ってくれる彼女に甘えて、泣きついて、苦しいことからの逃げ道にしてしまっていた。
作家に戻ると決めたときも、別れなくたっていいのに。用済みになったらポイですか・・・。
琴吹さんはシリーズ通してとても頑張ったヒロインだったのに、もっとも恵まれないキャラだったなぁ。
それでもエピローグでは心葉の前で笑っていられるんですから強いですよね。
次はもっと彼女を第一に考えてくれる相手が現れることを願うばかり。臣くんなんてどうです?
結局、誰ともくっつかなかったからこそ、こうして綺麗な結末になったともいえるので、文学少女派とツンデレ派の賛否両論の議論については、とくにどちらにも加勢する気はありませんね。
それなら『どちらも派』だった俺のこの行き場のない憤りはどうすればいいんですかっ!!( ゚д゚)
シリーズ中どの巻も十分に傑作級でしたが、これまでのすべての伏線を使い切って描き上げた、この最終巻こそシリーズ最高傑作であるのは間違いありません。
ときに6巻のエピローグでレモンパイを焼いていた人の正体は、絶対に野村さんの悪ふざけだと思う。
新刊が出るたびに大興奮で買いに走ったこのシリーズも、これで終了かというと名残惜しいものがありますが、早くも来月発売のコラボ短編集で登場だそうです。心葉の○○シーンもばっちり挿絵になるとか。
女装ですね、わかります。


