![]() | 放課後の魔術師 (1)オーバーライト・ラヴ (角川スニーカー文庫 208-1) 土屋 つかさ 角川グループパブリッシング 2008-09-01 by G-Tools |
ある朝、播機遥は見慣れぬ少年秋津安芸と出会う。転校生かと思い親切にするが、17歳で自分のクラスの担任教師になると知って愕然とする。そして彼の出現と同時に学園で不可思議な現象が起き始め・・・。
女子高生オーバードライブ
プログラム言語のような呪文で魔術を発動させる論理魔術師の教師(17)と女子高生(16)のカップルが織り成す学園ファンタジーです。
播機遥はイマドキの女子高生でありますが、芯がしっかりしていて、律儀なところがマル。
イギリスからやってきた、頭はいいけれどちょっと鈍い新米教師・秋津安芸を意識するようになるんだけれども、その想いにさっぱり気づいてない安芸に、自分から突進していく姿がとっても素敵。
最初はクールに接していた安芸も、彼女の溢れる行動力に振り回されて、次第に気になる相手へと変わっていくのがいいですねぇ。
安芸は教師としての理性から、遥は女子高生のプライドから、お互いの一線を踏み越えないように気張っちゃってるところなんて、二人とも若いなぁと思わず笑みがこぼれちゃう。
この二人のなんとももどかしい関係が最高に甘酸っぱいんですよ。ふふふ。
この作品の一番のキモは人物視点の描き方ですね。
基本は一人称ですが、播機遥と秋津安芸の視点が頻繁に入れ替わるんです。
これは米ドラマ『24』で用いられた「一人称多視点」と呼ばれる珍しい技法が使われています。
場面ごとに一人称の視点を切り換えて、それが繋がっていくことで物語になるという手法です。
時系列を追いやすい、心理描写が描きやすい、マルチな視点から事象を俯瞰出来るという、「一人称」と「三人称」の両方のメリットを備えた便利なものなのだけれど、ラノベで使っている作家はほとんどいませんね。もっと人数が増えたバージョンで成田良悟くらいかな。
最初は読み分けが混乱しそうですが、慣れてくれば次々に移り変わる視点が文章に心地良いスピード感を与えているのを実感できると思います。
論理魔術の設定については、他の作品でも似たようなものがチラホラあるけれど、作者がさすが元SEという肩書きなだけあって、ちゃんとしたプログラミング言語のように見える。
けど、魔術で出来ることと出来ないことの違いがイマイチよくわかりません。
紙切れを小鳥にしてから光に変換しているが、いきなり紙切れから光にはできないのでしょうかね。
安芸と遥の家庭環境はイイカンジに倒錯ラブってます。
嫉妬に狂った理事長と播機妹が手を組んで、安芸と遥の仲に介入するといった展開を所望。
安芸と播機妹がバトるって流れも面白そう。香音はハックされて妹側に回りそうだ。
全体的な完成度は非常に高く、キャラクターもそこまで奇抜ではないのに個性的に描かれています。
一見して欠点があまり見つからない優等生ですね。新人でこれはレベルが高い。
未読の方にはイチオシしておきます。


