ダフロン

2008年09月01日

この広い世界にふたりぼっち/葉村哲

4840124000この広い世界にふたりぼっち (MF文庫 J は 6-1)
葉村 哲
メディアファクトリー 2008-08

by G-Tools

肌寒い冬のある日、真っ白な狼に突然、求婚された少女・塚木咲希。孤独をうちに抱えた二人が出会ったとき。現実世界に”神話”が侵食しはじめる!
この理不尽な世界に生きる

孤独な少女と孤独な一匹狼のガールミーツウルフ(?)

これは微妙だ。微妙としか読後の心境を表現する言葉が見当たらない。

狼は森に、少女は学校や家庭に、それぞれ居場所がないと感じている両者が出会って、結婚する。
本来、触れ合わないはずの人間と狼が近づいてしまったためなのか、彼らの周囲で騒動と混乱が起き始める、といった具合のストーリーなのだけれど、まったく物語に入り込めなかった。

というのも、キャラクターとの間に無理解の壁を感じるんですよね。
家族に恵まれずに育ったらこうなるだろうという、荒んだ性格の咲希が、まず嫌い。
あまり幸せとは言いがたい境遇なのは確かですが、だからといってその不満を周囲に当り散らすかのように、自分の殻に篭って他人に譲らない、頑なな態度は見ていて気持ちのいいものじゃない。
「わたしは孤独だ」なんてセリフも、ずいぶんと身勝手な言い分に聞こえます。
周囲が排斥するから孤独なんじゃくて、周囲と打ち解ける努力をなにもしてないから孤独なんです。
すべては社会や周囲が悪いという、一方的で否定的な主義主張のひとつひとつに嫌悪感を抱く。

咲希とシロの関係にしても、ただの傷の舐め合いなんですよね。
結婚うんぬんも別にお互いに愛があるとかそういうことじゃないし。
一緒にいるための方便というか、言い訳じみてます。
似たもの同士の馴れ合いがここまで気持ち悪いものだとは・・・。

作者は「俺はこういうシリアスが書けるんだぜ!」と自画自賛な気分に浸ってるんでしょうね。
でも、はっきり言って面白味がないし、流れが単調で途中で飽きてくるし、全体的に根暗。
この作品で何を伝えたいのか、どんな想いを込めているのか、そこがさっぱり意味不明です。
文章力や構成力はそれなりのものだと認めますが、肝心の中身に魅力が感じられない。

咲希みたいに何事にも無関心でニヒルに構えているのがクールでカッコイイと本当に思っているとしたら、本格的に中二病だな。むしろ咲希みたいな人間は子供っぽいですよ。

そもそも日本に狼はいない。いたら大騒ぎだ。
というか狼が喋ったり、魔法を使ったり、いきなり女神さまが現れたりしてるのはオールスルーですか。もっと驚くなり、奇妙に感じるなり、感情の持ちようはあるだろう。
話のリアリティや整合性がムチャクチャでついていけない。

すみません、この不合理、理不尽、不条理な物語の読み方がわかりませんでした。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | MF文庫J | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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