ダフロン

2019年03月19日

トモハメ 2 友情音痴でぼっちな僕が、クラスで一番人気な彼女に懐かれたワケ/懺悔


幼少時のほろ苦い記憶から他人に興味が持てずにいた土屋だが、ただ一人だけ心を動かされる人がいる。それは行きつけの書店で働く『三つ葉ちゃん』。本名も知らない彼女に何も出来ない状況を鈴音に相談すると、ハイスペックな彼氏持ちの恋愛強者な彼女から告白の練習を勧められる。しかし練習するも中々自信が付かない土屋。そこで鈴音は『恋人になった後』のイメージを持たせて奮起させようと、より親密な特訓を提案する


 友情も恋愛も越えた男女の愛

 地味で冴えない男子高校生の土屋巧と、明るくてコミュ力があって学園のアイドルな女子高生・鈴音真理のちょっと変わった友情と恋愛の狭間の物語です。
 接点のなさそうな二人だが、お互いに大の親友だと思っている二人の交流が微笑ましかった。

 最近、ラノベ界隈では、ギャル系美少女ヒロインの波が来ています。
 消極的、内向的なコミュ障のオタク男子にとっては、相手から積極的に話しかけてくれる女子というのが魅力的に見えるのでしょう。
 自分としては陽キャのノリで話しかけられるのは、相手してて疲れそうだなと思うのですが、この作品のヒロイン・鈴音は会話のテンポが良く、どこまでも自然体です。

 他人と距離を置くタイプの土屋だが、天性の魅力で全校男子に惚れられて男友達ができない鈴音にとっては特別な存在で、土屋にとっても面倒な性分の自分と真正面から向き合ってくれる大切な存在。
 ことさら男女の性差を持ち出すでもなく、どちらかが一方に甘えすがったり、一方的に振り回すような上下関係がない。そんな関係がなんとも心地良い。

 鈴音には両思いの年上の恋人がいて、土屋にも片思いの女の子がいて、恋愛感情とは別腹の友情でお互いの恋を応援している。信頼し合っているからこそ、何でも隠し事が言えて、何でも受け入れて通じ合っている関係が心温まります。

 そして自分たちの友情がどこまで維持できるのか、お互いを試す行為が次第にエスカレートしていって、やがて一線を踏み越えていくところに、ただの友情では計れない深い愛情を感じます。
 けれど、不思議と彼らの行為には性的な卑猥さ、いらやしさは感じず、満足感と肯定感に溢れていて胸がいっぱいになります。

 友達としての心の交流が身体の交流に変わっただけで、彼らの中では友達へのスキンシップと性行為がシームレスに繋がっている。本能からでも理性からでもない情動から生まれていて、彼らにとってはあるべき姿、自然な行為なのだと納得してしまう。

 色々な好きがあって良いと思うよ。

 というのが、この本の帯にも書かれているテーマですが、まさに今の自分の思いが集約されていると思います。

 確かに、この二人の距離感で友達というのはおかしい、という感情はありますが、人間関係には友情とも、恋愛とも異なる愛情がある。男と女だからと無理して友情と恋愛の2択の枠にハメなくても、こういう男女の関係だってアリなんじゃないかと示してくれています。

 正直、前作は性欲が先に来ていたけれど、今作は青春物語として洗練されてて、お世辞でなく感動しました。

 シミルボンにも掲載しております。トモハメ 〔2〕(友情音痴でぼっちな僕が、クラスで一番人気な彼女に懐かれたワケ)
posted by 愛咲優詩 at 00:00| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月14日

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王/冬月いろり


空間が意思と魔力を持ち、様々な魔物が息づく世界・パライナの北端に、誰も訪れない《最果て図書館》はあった。記憶のない館長ウォレスは、鏡越しに《はじまりの町》の少女ルチアと出会い「勇者様の魔王討伐を手伝いたい」という彼女に知恵を貸すことに。


 それは物語の勇者のように

 勇者と魔王の決戦を影で支えた少年と少女の《誰にも語り継がれないお伽噺》

 タイトルでピンときた方もいると思いますが、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』ですね。
 いつの頃からか《最果ての図書館》の館長をしている少年・ウォレスが、ある日、倉庫で見つけた姿見が、何故か遠くの街に住む少女ルチアの元と繋がって、離れた場所で紡がれる交流が優しい。
 世界観はファンタージエンではありませんが、その影響を思わせるオマージュになっています。

 落ち着いて大人びた少年ウォレスと、お転婆で活発な魔女見習いのルチアの掛け合いが愛らしく、ルチアの悩み事をウォレスが知恵を出して解決するという相棒と呼べるような関係性がいいですね。
 図書館の外に出ることができないウォレスと、魔物が活発したせいで街から出れないルチア、お互いに遠くの土地への憧れを持っている者同士が交流する文通のような楽しさや喜びが伝わってきます。

 魔王の存在によって世界に危機が迫っている。魔王を倒すために勇者が旅立つ。英雄譚とは無縁の脇役のつもりだったウォレスもルチアですが、勇者を影で支えていくようになっていく構成が巧みでした。
 勇者と魔王の立場がひっくり返るというのは、まさに『はてしない物語』で描かれていたストーリーですね。ウォレスの過去が明かされ、物語の重要な役割を担うところは思わず会心の笑みが浮かびました。

 飛竜に乗って駆けつける場面とか、まさしくフッフールで夜空を飛ぶ映画の名シーンじゃないですか。
 お守りとか、魔法の剣とか、隠れ蓑とか、登場するアイテムの数々も「そういえばこういうの、あったあった」と、懐かしさがこみ上げてきます。ライトノベルとしては、現代風ではないかもしれません。派手さはありませんが、綿菓子のようにふわっと甘い作者のファンタジーへの愛が感じられる作品でした。

ファンタージエン 秘密の図書館
ファンタージエン 秘密の図書館
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月12日

つるぎのかなた/渋谷瑞也


かつて“最強”と呼ばれながら、その座を降りた少年・水上悠。もう二度と剣は握らないと決めた彼はしかし、再び剣の道に舞い戻る。悠を変えたのは、初めて肩を並べる仲間たち、彼に惹かれる美しき剣姫、そして高校剣道界最強の男・快晴。二人が剣を交えた先で至るのは、約束の向こう、つるぎのかなた。


 蒼天の剣が嵐雲を斬る

 つるぎのかなたを目指し、剣道にすべてを捧げる高校生たちの青春剣道物語。

 この話の本当の主人公は最強に憧れを抱いて成長した剣道少年の快晴くんだと思う。悠がラスボス。
 かつて最強と称されながら剣の道を捨てた主人公・水上悠が、高校の剣道部に勧誘され、様々な仲間と出会い、試合を繰り広げるうちに眠っていた闘志に火がつき、再び剣の頂きを目指す勇姿に痺れました。
 ちなみに私も元剣道少年でしたが、作中の描写は誇張無しでありえます。リアリティに忠実です。

 正直、悠とかいう鬱屈ヤローはどうでもいんだ。快晴くん、悠の前に立ちはだかる強面なライバルキャラかと思っていたら、実は悠に憧れるガチファンで、ものすごい純情な青年で愛着がわいてしまった。
 その妹の吹雪ちゃんも可愛いのに剣道一筋で、それ以外は不器用な何もできない残念美少女だけれど、何かというと斬るか殺すかで考えるマジ物騒な思考回路が見ていて楽しいんです。この兄妹しゅき!

 なにより試合の立ち回りの剣劇描写が傑出してるんですよね。足運び、竹刀の打ち方、受け方、選手が一瞬で判断し、相手を追い詰めていく攻防を卓越した疾走感、重厚感で見事に描ききっています。
 心は相手への敬意と高揚感に溢れていながらも、鬼の形相と野獣の咆哮で剣を振るう姿に圧倒されます。相手が憎いからではなく、お互いに高め合うために剣を交える。これぞまさしく剣道の理念。

 しかし剣道用語や習慣を普通に使いすぎて、経験者でもないと理解が難しいところがあります。団体戦を描く上で登場させる必要があるにしても、脇役が多すぎてキャラ書き分け切れてないのが惜しい。
 それでいて一人称の視点が一貫していないので読んでいると忙しなく感じてしまいます。猛々しい勢いが文章全体から伝わってきますが、もう少し読みやすく整理できていればなぁと。次回の団体戦に期待。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする